エピローグ
2人の食事とその後1
グツグツグツッ
ジュージュー
久しぶりのキッチン。
そして久しぶりの料理。
13年間ずっと当たり前のようにしていたことが懐かしく感じる。
トントントンッ
「・・・」
チラっ
キッチン越しにはテーブルに座りニコニコしながらこっちを見てるはるか。
思い返せば、はるかはいつも料理を作っている僕をリビング越しに見ていた。
「どうしたの〜?」
「ううん、見てるだけ〜」
「楽しいの?」
「うん!」
「それにすっごい久しぶりだもん」
「あはは。もう3年くらい経つもんね〜」
「お家も久しぶりだし、ゆうまが料理作ってるのを見るのも久しぶり!」
「私、ご飯作るゆうまの姿見るの好きなの」
「ただ作ってるだけだよ(笑)」
「違うの〜!そうゆうことじゃないの!」
「んーそっか(笑)」
「もう少しで完成するよ〜」
「はーい!」
「食べられるようにテーブル用意して〜」
「はーい!!」
これまでもあっただろう何気ない会話。
僕が家を出る前もあったと思う。
けれど、そんな当たり前のことが普通になってしまい、なにも感じなくなっていた。
そんな当たり前を僕は気がつがずに捨てようとした。
いや、捨てた。
でも、今になって感じた。
そんな当たり前のことが本当はすごい大切で幸せなことだって。
「できたよ〜」
トン
トン
トン
テーブルの上にははるかの大好きなハンバーグとレンコンが入った餃子。
それとサラダにスープと白米が並んだ。
「う〜ん!いい匂い!」
「早く食べたいよ!」
「はいはい!」
ガタッ
2人の飲み物を持ってテーブルにつくゆうま。
「さっ食べようか!」
「うん!いただきまーす!」
「いただきます」
…
「う〜ん!!おいし〜!」
「ありがとう」
「やっぱりゆうまのご飯が一番おいしい〜〜!」
「褒めすぎ(笑)
「ほんとだよ〜ゆうまのご飯だとたくさん食べれちゃうから(笑)」
「ずっと病院飯だったから味が濃く感じると思うけど、今日はたくさん食べ〜」
「うん!食べまーす」
いつものテーブルで2人でご飯を食べる。
バラエティ番組を見ながあーだこーだ何気ない会話をしてご飯を食べる
3年ぶりの2人のご飯。
はるかが目を覚ましてすぐはどこかぎこちない会話だったけど、今は昔のように戻ってきた。
色々あった。
だけどこれまでに積み重ねてきた時間が、濃さが。
13年という2人しか分かり合えないなにかがあるのだろう。
「あぁ〜美味しかったです!」
「作ってくれてありがとうね」
「いーえ〜!」
「美味しく作れてよかったよ」
「久しぶりだから不安だった(笑)」
「いつもと変わらない美味しさだったよ〜」
「えへへ、ありがと」
「じゃあ片付けますか〜」
「あっゆうまは座ってて!」
「私がやるから!」
「いやいや、いいよはるかは座ってて」
「ううん!だめ!私がやるの」
「えっ・・・いいの?」
「うん!」
「座って休んでて〜」
「・・・あ、ありがとう」
率先して後片付けをしてくれるなんて。
これまでたまにやってくれたことがあったけど、僕がやるもんだと決めつけてやらせないようにしていた。
だからビックリした。
ガチャガチャガチャ
シンクに溜まっている食器を洗うはるか。
その光景に少しの変化を感じた。
ご飯後はいつも使った食器を洗うことが日常だったから。
けど今日は満腹の状態でソファーに座りテレビを見る。
「なんか変な感じだ」
はるかに聞こえないくらいの声で呟いた。
「ゆうま温かいお茶作るけど飲む〜?」
「あっ飲む〜」
「私の好きなやつでいい〜?」
「いいよ〜」
僕が食器を洗った後にはるかがいつもいれてリビングでテレビを一緒に見る。
これが日常だった。
そして今日も。
スタスタスタ,,,,
「できたよ〜」
お茶をいれたはるかがソファーに来た。
「ありがとうね」
「はーいこれ」
「熱いからね!」
「うん、気を付ける〜」
ドサッ
マグカップを手に持ったはるかが隣に座ってきた。
「ふぃー疲れたぁー」
ズズズ
熱いお茶を飲みながら一息ついた。
「はるか、食器ありがとうね」
「大変だよね食器洗うのって」
「どうしたのいきなり??」
「・・・」
「ゆうまこれまで、ううん、いつもやってくれててありがとう」
「えっ、、?」
「・・・」
「あのね…」
神妙な表情をしたはるかがゆっくりと口を開いた。
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