ゆうまの気持ち

第14話 偶然の再会1

「東京に頑張って出たって聞いた、ゆうまがこんな所でなにしてるのー?帰省する季節でもないのに(笑)」


「あーまぁ…って、そうゆうきょう姉もなにしてるの!?」


そこにいたのは隣の家のきょうか。

元々その家に住んでいて、僕が19歳くらいの頃に結婚して家を出て行った。

つまり、お隣さんの少し年上の幼馴染だ。


昔から僕ら兄弟の事を気にかけてくれていて、よく面倒も見てもらってたし、遊んでもらっていた。

茶化されたこともたくさんあったが、いつも笑顔で元気なお姉さん。

カッコよくもありセクシーでもあったきょう姉は、憧れもあったけど少し好きだった。


そんなきょう姉が結婚して家を出ると聞いた時、まぁ27〜8歳の女性と考えると結婚も普通だったのかもしれないが、そんな事も分からなかった僕はすごいショックだったのを覚えている。


「私?(笑)えぇーとね…話せば色々長いの!」


「色々かぁ(笑)まぁ色々あるよね…笑」


きょう姉が言った「色々」がまさに分かる、と思った。

一瞬だけ、またこの前の、昨日の、さっきのやり取りが頭をよぎった。


「そうそう(笑)」


「だ、だよね(笑)!…」



「あっそうだ、もう…11年ぶり?くらいにタイミングよく会ったんだから、これからカフェとか行こうよ!」


「えっ…僕の今家に着いたばかりなんだけど…」


「そんな今だからちょうどいいんだよ!(笑)お家でまったりしちゃったら家から出たくなくなるし!」


「まぁ…そうかも知れないけどさ…」


「はい!じゃあ支度して5分後にお家の前集合ね!ゆうま約束♪」


「わ、わかったよ(笑)」

こうゆう少し強引なところも相変わらずだった。

けど、懐かしいと言う思いと、きょう姉は変わってないと言う安心のようなものを感じた。


「よし、良い子!じゃあまたあとでねー」

そう言うとそそくさに家に戻るきょう姉。


そんなきょう姉を横目に僕も実家に戻った。



ガチャ


家に入ると誰もいない。

兄弟達もみんな実家を出ていて今は両親だけが暮らしている。

僕らが家を出たことでかなり物が少なくなっている印象を感じたが、昔と変わっていない実家。


「っと、支度しなきゃ」


自分の荷物を部屋に置いて準備を進めた。

と言っても特にすることはないのだが。

少しだけ髪の毛を整えて、財布とスマホを持ち家を出た。


バタンっ


まだきょう姉はいない。

約束した家の前で来るのを待つ。


きっかり5分後扉が開く音がした。


「ゆうまお待たせ」


5分でどうやったらそんなすぐに支度ができるのか?と思うくらいさっき見たきょう姉とは違う外用のきょう姉が来た。


「きょう姉、別人やん(笑)」


「ゆうま〜それはどうゆう意味かなぁー?」


「あっいや、悪い意味じゃなくて!!」


「うふふ(笑)知ってるよ!さぁ行こう!」


きょう姉が結婚してから会ったことがない。

昔の印象はカッコよくてクールな洋服を着ていたが今は違う。

ロングスカートにレースのブラウスのフェミニン系のファッションを着ていた。


これまでと違うきょう姉を見て少しドキッとした。



カフェは徒歩で20分くらいのところにある純喫茶。

僕らが中学生の時からあって、ご夫婦で経営をしている。


「はーい、着きました〜」

「まだやってて少し嬉しいや!ね、ゆうま」


「あっそだね(笑)」


当時、近所にまったりできるところはここしかなくみんな使った記憶があるカフェ。

入り口は昔のまま。それがまた懐かしい。


カランっカラン


扉を開く。

あのテーブル、あの本棚、あの電飾。

変わらない。

変わったのはカウンターに立つご夫婦だけ。

きっとご夫婦は僕のこと覚えてはいないけど、昔見た変わらない風景。すごい懐かしい。


夕方過ぎだからなのか、お客さんは1組だけ。


感慨深く少し入り口で立ち止まってしまった。


「…」


するときょう姉が手を引っ張った。


「ゆうまなにしてるのー(笑)」


バッ


「早くテーブル行くよー」


「あっ…うん、ごめん」


スタスタ


きょう姉に手を引かれたままお店の中に進んだ。

 

ドスっ

 

着席する2人。


「ゆうま何にするー?」


「あっ…えっ、僕はアイスティーで」


「じゃあ、わたしは…」

「すいませーん!」


ホント変わらないきょう姉。

なんでもパッパと行動し決めてしまう。


そう思う間にもう注文を済ませてしまった。


「そういえば、ゆうまなんでいるの?」


「あっ、いきなりそこ!?(笑)」

ほんと笑けてしまう。

でも、いつものきょう姉がいる。


「だって帰ってくるなんてずっとしてなかったでしょー?」

「大晦日とか正月でも帰ってこないゆうまがいたからびっくりしたよ!」


忙しいやめんどくさいとかを理由に東京に出てから実家に帰ってきたことはなかった。

それに、大晦日などのイベントごとははるかのご実家にお邪魔していたから自分の実家に帰る時間が取れなかったのもあったりするのが事実。


「あっ確かに(笑)」

「そう言われると実家に帰ってきたのが10年ぶりだよ」


「でしょー」

「お母さんとかからは聞いていたけど、20歳の時に家を出たって」


「そうやねー」


「東京で頑張ってるって聞いてたよ!」


「…そうだねぇ、、色々頑張っていたかな…」


「…ゆうまなんかあった?」


「んっいきなりなんで?」


「いやさ、玄関で鉢合わせして声かけたでしょ」

「ゆうま気がついていないと思うけど、隠し事とか不安な事があったりすると手を握ったり握り拳にする癖があるんだよ」


「えっ…?」


「昔からゆうまはそうなの」

「で、声かけた時見かけたからカフェに誘ったの」


「…知らなかった」


「小さな頃からゆうまを見てる私だからね!」

「さすがでしょ!」


「ほんと、きょう姉はすごいよ(笑)」


「でしょでしょ(笑)」

「で、どしたの?」


「あー…その、、そうゆうきょう姉はなんでご実家にいるの?」

なかなか言い出せずに話を逸らした。


「私?」


「うん、帰省する時期でもないから!」

「きょう姉は結構実家に帰ってきてるの?」


「いや、そんなことないよー」

「大晦日とかそうゆう時しか帰ってこないし!」


「ほらー僕と一緒じゃん!」


「いや、ゆうまと違ってちゃんと大事な時には帰省していましたー(笑)」


「ぼ、僕は忙しいのー!!」


「ダメな子だー!お母さん寂しがってるよ!」


この調子。きょう姉のリズムに狂わされる。

でも、ちゃんと僕の事を怒ってくれたり、話を聞こうとしてくれる。

なんか、嬉しいとも感じた。


「いいの!」

「そ、そうゆうきょう姉はなんでいたの!?」


必死で話を逸らす。


「またそうやってー(笑)」

「ゆうまは変わらないね!そうやって自分の事言わないようにするところー」


ちょっと刺さった。


「いいから!きょう姉はなにしてたの!?」


「…んー私は、、」

「実はね、離婚したの」


見たことがない深妙なきょう姉が重い口を開いた。



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