ジェネレーションギャップ

私は同年代の男が嫌い


ガキみたいで本当幼稚


だから私はいつも、年がかなり上の人を好きになっていた。


今回の相手は一番歳の差があった。


その差なんと四十歳。


前妻とは死別しており、子供はいるものの、奥さんが死んでから会っていないらしく、私も会ったことはなかった。


周囲からは盛大に反対されたけど、当時の私は彼しか見えておらず、彼の短所は全て長所に見えてしまっていた。


だから、二十歳になってから駆け落ち同然で彼と結婚した。


三十年も前の話である。


でも、結婚してからは、私が思い描いていてた結婚生活とは程遠いものだった。


旦那は究極の亭主関白で、家のことなど一切しなかった。


それだけならまだしも、私の料理が気に入らないと投げつけてきたり、掃除ができてきないと怒鳴り付けてきた。


仕事が忙しく、居眠りしていたら髪を掴まれて揺さぶられ、亭主の前で居眠りとは何事だと怒鳴られ、その後一時間近く説教をされた。


ただ黙っていれば済む…そう思っていたが、今度は子供を作ると一方的に言い出し、こっちの予定も考えず、無理矢理毎日子作りに付き合わされる事になった。


今まで付き合った元彼たちの、AVを見本にしたやり方の方がまだマシだったと思えるくらいのやり方で、慣らしもせずにいきなり挿入してくるのだ。


毎日が苦痛で、早く子供が出来ろと願っていた。


その願いが叶い、私は妊娠した。


しかし、その後も旦那の態度は変わらず、つわりがひどかろうが、家事を怠れば情け容赦なく怒鳴ってきた。


私は男女の双子を産んだが、出産後も私の見舞いには来ず、子供だけ見て帰っていたらしい。


退院した後も子供の面倒を見ることはなく、家事も子育ても全て私任せ。


すでに退職していた旦那の退職金や年金と貯金だけでやっていくのも不安だったため、私が貯めていた貯金がなくなったらパートに出るようになった。


しかし、保育料と子供用品やら何やら、諸々で給料は瞬く間に消えていき、旦那のお金と合わせて何とかやっていける状態であった。


それでも何とかやっていけていたが、子供が成長していくとともに、異常なほど旦那が子に対して厳しくなっていった。


しかも息子だけに。


昔はこうして躾けていたんだ、跡取りは強くなければならんと、少し失敗をしたくらいで何発も平手打ちをする、家中に響き渡るような怒鳴り声で何時間も怒鳴り続ける。


厳しくしすぎだと言ったが、男は叩いて怒鳴って強くするんだ、女のお前が口出しするなと怒鳴り返され、それからは何も言えなくなってしまった。


そして、一番揉めたのが、娘が大学に行きたいと言った時だ。


理由も聞かずに、女に学は必要ない、花嫁修行でもしてさっさと嫁に行けと一蹴。


時代はもう平成であった。


旦那の価値観は古すぎた。


感覚が昭和初期で止まっている状態だった。


奨学金を借りる、バイトもするからと言うが、女の親孝行は何より孫の顔を見せる事だと言い、何も聞こうとしなかった。


娘は怒り、就職と同時に家を出る事に…


自分で稼いだ金で、いつか大学に行ってやる、父の価値観は到底理解できないし、それに対して何の反論もしてくれない母にも失望したと言われた。


私が言ったところで何にもならない。


どうせ怒鳴られるなら何も言わないほうがいい。


それとは反対に、息子には大企業に入ってもらうために有名大学に入ることを強いた。


本当は絵を描く仕事につきたくて、絵の専門学校に行きたいと言ったが、跡取りがそんな稼げもしない仕事について言い訳がないだろうと、殴る蹴るを繰り返し、部屋にある画材も全部壊して捨ててしまった。


何とか有名大学に進めたが、成績が全教科一位になることを当然のように言う旦那は、息子の成績を見ては激昂し、しまいには木刀で叩くようになった。


息子の体はあざだらけになり、これ以上は息子の体も心も壊れてしまうと言ったが、そうなったら所詮それまでの男だったと言うことだ、次を作ればいいと言い出した。


旦那にとって子供は、自分の思い通りに動くロボット…ダメならまた作ればいいと言う感覚なのだ。


そんな日々が続いたある日…息子は命を絶った。


娘は兄が死んだのはお前らのせいだと言った。


私は何も言い返せなかったが、旦那は親に向かってその口のきき方は何だと怒り、拳で思い切り顔面を殴った。


娘は気絶したが、それも気にせず娘の事を蹴り付けた。


私や周囲の人間が止めに入ったが、それを振り払い、腹を踏みつけていた。


その時、娘は交際相手との子を妊娠していたようで、流産してしまった。


娘は私達と縁を切り、二度と私たちの前に現れなかった。


旦那の子供達も、こういう経緯があって旦那と縁を切ったのかもしれない…。


その後の私はと言うと…新たな跡取りを作ると言われ、再び子作りが始まった。


しかし、二人連続で女の子…女の子でもいいじゃないと言うが、跡取りは男と昔から決まってるんだと言い、三人目を妊娠…


しかしその頃から旦那は認知症になり、軽い脳梗塞をやった後、急に悪化…しかも三人目の子には障害があった。


今私は、子育てと旦那の介護をしている…


保育所に預ける余裕もないので、私は仕事を辞め、貯金を崩しながら三人の子供の面倒を見て、そして子供以上に手のかかる旦那の介護…


上の子がいたずらをし、その片付けをしていると、今度は旦那が何かをやらかす、一番下の子が泣いていると、うるせえと怒鳴り、踏みつけようとしてくる。


私は一室に鍵をかけ、そこに旦那を閉じ込めた。


しかし、ドアを壊す勢いでドアを殴る蹴るする始末…


頭が狂いそうになった。


理不尽に子供に当たり、暴力も振るうようになってしまった。


これでは私が子供か旦那を殺してしまう…


私は娘に連絡をした。


いくらあんな事があっても、この状況なら助けてくれるんじゃないかと考えたからだ。


でも浅はか過ぎた。


娘は電話にすら出てくれなかった。


どうしようもなくなり、私は親に助けを求めた。


私とこの男はどうでもいい。


子供だけでも助けて欲しいと…


親は二十五年も絶縁状態だった私を助けてくれた。


まず子供達を預かってくれて保育所を探して預け、一番下の子は在宅ワークをしていた母が面倒を見てくれたり、介護に対して調べまくってくれて、介護施設に入れられるようサポートしてくれた。


それから三年、ようやく旦那を介護施設に入れられるようになった。


その二年後、旦那は死んだ。


ようやく地獄から解放されたと思った。


子供達も両親のおかげで良い子に育っていた。


旦那の葬式の時、親に言われた。



もしまた結婚するなんて考えているなら、もう少し歳の近い人とにしなさい。



やめてよ、もう結婚なんてまっぴら…



私はそう返した。


あの頃は無知で、歳の近い男と違う雰囲気を纏った旦那に惹かれていた。


でも、彼の内面をろくに見もせず、勢いで結婚してしまった。


この子達には気をつけるよう言い聞かせよう。


年が上過ぎると、年代での価値観の違いがあったりして大変な思いをするよって…

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