第10話:宿命の絆と再会の舞踏会

 父上がクライン侯爵領から帰ってこられました。

 同盟各家が集結する事で、侵攻を企んでいたミゼラン王国の圧力を跳ね返されたそうです。


 私たちがポルストン王国軍を片手間に壊滅させたのが、ミゼラン王国を恐怖させたのだと思います。


 だからと言って、同盟の要となるクライン侯爵家のテオ様が我が家に来られるほど余裕があるとは思えないのですが?


「やあ、お久しぶりだね、舞踏会に来てくれると思っていたのに、どうしたんだい?

 何度も手紙のやり取りをしているから身近な気がするけれど、実際に会った方が親愛の情が深まるから良いね」


 私が他家に行きたくない理由くらい分かっているでしょうに……


「私は領地に籠っている方が好きなのです、もう誘わないでください」


「そうなのかい、それは悪かったね、だったら出来るだけ私が来るようにするよ。

 実家の舞踏会や晩餐会には参加するのでしょう?」


「我が家に来てくださった方々に礼を失する訳にはいきませんから、参加はさせていただきますが、それほど長くいる訳ではりません」


「少しでもいてくれるのならそれで十分だよ、今日の舞踏会も参加するのだよね?」


「はい、最初の挨拶の後で、参加してくださった皆様に挨拶させていただきます」


「まさか、全員に挨拶し終わったら退出してしまうのかい?」


「はい、その心算ですが?」


「できたら私とダンスを踊ってもらえないかな?」


「私などを誘われなくても、テオ様ならダンスの相手に困られないでしょう?」


「ダンスの相手は誰でも良い訳ではないよ。

 領地を空けてここまで来させてもらっているのだから、できるだけ互いのためになるようなダンスを踊らないとね」


 我が家との同盟が順調だと周囲に知らせるには、クライン侯爵家の跡継ぎであるテオ様と、ミュラー伯爵家の令嬢である私が踊るのが一番ですね。

 政略結婚では家の力になれませんでしたが、それくらいの事ならできます。


「分かりました、一曲踊らせていただいてから自室に戻らせていただきます」


 そう言ってテオ様と別れました。

 そのまま何事もなく夜の舞踏会まで時間が過ぎると思っていたのですが……


「閣下、伯爵閣下、殿下が、アニカ王妃殿下が来られています!」


 私とジョナサン王太子を婚約させたのがアニカ王妃殿下とクラウゼ公爵閣下です。

 つまり、あの思い出すのも嫌な事件の切っ掛けを作った人です。


 クラウゼ公爵閣下はワグナー王国を捨てて、父たちと同盟を結んでおられますから、恨み辛みは水に流しました。


 ですが、アニカ王妃殿下には複雑な思いが残っています。

 あのような人間を育てておいて、婚約させた恨みが残っています。

 同時に、実の子供であるジョナサン王太子を殺してしまった罪の意識もあります。

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