第6話:同盟と王家の終焉

 父上が大きな二十人掛けのテーブルを片手で持ちあげます。

 周りの貴族達が顔色失っています、普通では考えられない事なのでしょう。


 重厚な一枚板のテーブルは、重過ぎて人が持ち上げるのは不可能なのですね。

 ミュラー伯爵家の者は、私も含めて普通に持ち上げていましたから、初めて知りました。


 父上は何の反動もつけず、シュナイダー侯爵に軽々とテーブルを叩きつけます。

 グシャという音とともに、シュナイダー侯爵が潰れました。


 父上がテーブルを持ちあげると、シュナイダー侯爵が馬車に踏み潰された蛙のようになっています。


 いえ、元が人間だったとは思えない潰れ方です。

 うつ伏せや上向きに潰されたら人間の残骸と分かり易かったでしょうが、尻餅をついた状態で頭から尻に縦に潰されたので、元が人間には見えませんでした。


「さて、文句のあるやつはいるか?!

 娘も儂もミュラー伯爵家も、受けた恥辱は決闘で晴らした。

 この決闘が不正であるという者は今直ぐ出てこい、新たな決闘に応じよう。

 出てこないのなら正当な決闘だと、貴君らが証明した事になるぞ?

 それでいいのだな、よし、分かった、後々の異議は一切認めんからな!

 次に敵討ちがしたい者はいるのか、いるなら出てこい!

 王太子ジョナサンの敵討ちがしたい者、いないのか?

 いないなら決闘の受付は終わるぞ。

 シュナイダー侯爵サミュエルの敵討ちがしたい者!

 いないのか、いないのなら決闘の受付は終わるぞ?

 誰も何もこの決闘に異議異論がないのだな?

 だったら儂と娘は領地に帰らせてもらう。

 今日只今よりミュラー伯爵家とワグナー王家は何の縁もゆかりもない!」


「ああ、待ってください、私も領地まで御一緒させてください」


「ふむ、貴君はクライン侯爵家の嫡男だと名乗られていたな?

 御一緒したいとはどう言う事かな?」


「私はテオと申します、お見知りおきください。

 率直な話、もうワグナー王家はお終いです。

 あんな暗愚を王太子に据える王家に仕えるなど真平御免です。

 それと、国がどうなるかはともかく、王家は滅ぶしかありません。

 激しい戦いが始まるでしょう。

 家を保つには、新たな同盟を結んだり、盟主を決めたりしなければなりません。

 その御相談がしたいのです」


 クライン侯爵家のテオ様が父上に同盟を申し込まれました。

 テオ様ならジョナサンと違って信頼できるでしょう。


「恥を忍んで頼むのだが、私も御一緒させてもらえないかな?

 私もクラウゼ公爵家の家臣領民を守る責任がある。

 ミュラー伯爵が私を信用できないというのなら、隠居して息子をうかがわせる。

 どうか話に加えて欲しい」


「私も頼みます」

「当家も参加させてください」

「我が家も御願します」


 ああ、王太子の愚かな謀略で王家が滅んでしまいますね。

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