断片集

行方行方

ラクダクライシス

「暑い」本日何度目かわからない台詞が自然と声になる。そう言ったところで状況は何にも変わりはしないのに。

 夏だ。どうしようもないくらいに。


 背後から捻髪音がしたかと思うと、続いて爆発音がした。轟音が地を駆け、俺の鳩尾を揺さぶる。


 しばしの逡巡の後、俺は振り返った。その先に――


――いたのは一頭のラクダであった。


しかもよりによってフタコブの。

あまりに突飛な出来事に呆然としている俺に向かって、ラクダは言い放った。


「お前、俺の姿が見えるのか?」


俺は正気を疑った。もちろん自分のだ。ラクダの正気を疑えるほど俺はラクダに詳しくない。


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