スクールズ・アウト!
@8419blue
第1話 模倣犯
待ちわびたチャイムが鳴り響き、授業の終わりを告げる。
廊下に出ようとしたら、駆け込んできた背の高い男子生徒と鉢合わせ。身をかわすも、軽く接触。
こちらには全く目もくれず、バスケ部の次世代エース殿は、教室の奥へと突進。スマホを振りかざしながら叫ぶ。
「おい、リナ! これって、どういうことだよ!」
「もう、ケンジってば、声デカすぎだって……。だからあ、そういうことじゃなくて……」
はいはい、勝手にやってろ――
トイレ脇の掲示板の前で、ふと足が停まる。
『加々見川クリーンフェスタ 7月31日に開催決定! 生徒諸君、どうか振るってのご参加を!』
要は、炎天下の川原でのゴミ拾い。素人バンドやコーラス隊が奏でる騒音を拝聴しつつ、ご褒美としてかき氷が振舞われる。
そんな楽しい「フェスタ」に参加したがる奇特な生徒が、この善雲学園高校に一体何人いらっしゃることやら。
帰宅すると居間から母の声。
「もうすぐ、夏休みだねえ」
こちらに話しかけているらしい。冷蔵庫を開け、カロリーゼロのコーラを取り出す。
「お前もさ、いつも閉じこもってばかりじゃなくて、たまには友だちと出かけたりとか」
もちろん相手にせず、二階へ。階段を上る足音も自然と荒くなる。
部屋に入るや否や、ソファに倒れ込む。速攻でエアコンの電源オン。汗が幾分ひいたところで、モニター前に移動。コントローラーで狂戦士を召喚。殺戮のオデッセイの幕が上がる。
と、スマホに着信。
送信元を確認し、思わず頬が緩む。
自分とあいつがこんな関係だとは、学園のやつらは夢にも思うまい。
〈一応、最終確認。覚悟はできてるな?〉
文面はそんな問いかけから始まっていた。
〈実際にことを起せば、警察沙汰になるのは当然避けられない。去年のようなくだらないおふざけとはわけが違う〉
去年の一件を、あいつはまるで取るに足りないことのように言いたがる。
まっ、その気持ち、わからんでもないけど。
でも、あれはあれで、退屈な日常にそれなりの爪痕を遺してた印象。
映画『キャリー』のクライマックスシーンを連想させたのは、自分的には結構ポイント高し(犯人だと噂の例の彼は、もしかして大昔のロックだけじゃなくホラーもお好き?)。
とはいえ、これから自分たちがやろうとしていることは、あれより遥かにレベルが上なのは確か。
〈あんたこそ〉
返信を入力しかけ、少しためらったのち修正。
〈そっちこそ、本当に大丈夫?〉
もし、真相がバレたとき、失うものはあんたのほうがずっと大きいだろうに。
まさか、いざとなったらこっちに全てを押し付けるつもり?
そんなに都合よくはいかないと思うけどね。
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