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赤いプラスチックでできたスツールに私を座らせると、佐山はレジカウンターの方に顔を向けながら、なにを食べますか、と訊いた。
私は佐山の異様に色のない首筋のあたりを眺めながら、なにも、と答えた。
「お腹、空いているでしょう。学校帰りのようですし。」
私に視線を移して微笑む佐山は、やはり爽やかすぎて逆に胡散臭い印象が拭えない。
「 食べられないんです。お肉とか、チーズとか、ポテトとか。」
子供の頃からの偏食は、14になっても治っていなかった。もし、素直に佐山に飯を奢ってもらう気になったとしても、ハンバーガーショップには私が食べられるメニューなどほとんどない。
佐山は少し驚いたように瞼を動かすと、カウンターに肩を被せるようにして、窓の外を無意識のような仕草で覗き込んだ。
佐山のその視線の先には、同じように窓際の席が全面ガラス張りになっている喫茶店があった。
佐山はすぐに姿勢を戻すと、申し訳なさそうに私の目を覗き込んだ。それは私が見る限り、芯から私に詫びる視線だった。
あちらの喫茶店に移りましょうか、などと佐山が言い出す前に、私は慌てて口を開いた。
「コールスローサラダとソフトクリームとココアがいいです。」
そんな無防備な顔を突然見せるな、と言いたかった。
佐山はすぐさまにっこりと微笑んで頷き、レジカウンターに注文をしに行った。その笑みが掛け値なしに胡散臭かったことに、私は出所の分からない安堵を覚えた。
コールスローサラダとソフトクリームとココア、それに佐山のホットコーヒー。それらが並べられたテーブルに佐山と並んで座る。 ファストフード店の雑多に賑わった店内は、墓から掘り起こされたばかり見たいな佐山の雰囲気にはまるで似合っていなかった。
「どこまでご存知ですか?」
私がソフトクリームに手を付けるのを待ってから、佐山はそう切り出した。私は佐山にまた唐突な無防備さをさらされたくはなかったので、ソフトクリームを食べる手を止めないままそれに応じた。
「やくざから足を洗って以来、誰かの愛人のようなことをしてお金を稼いでいることは知っています。」
「そうですか。」
佐山はコールスローサラダのパッケージの蓋を外したり、紙ナプキンを使いやすいように畳み直して私の手元に寄越したりしながら、少しの間黙っていた。
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