私は神崎みゆでない

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第1話 未来への始まりの物語①


 私は神崎みゆである。


防衛都市ガランドラ、そこは原因不明の災害であるパンドラ・グレイスを食い止め原因を解明するために作られた街であり、私はそこで防衛部隊第十一部隊に所属している。


そこでは日々パンドラ・グレイスに対し鍛錬を積んだり友達と遊んだりと人によってやっていることは様々である。


そんな中私は昼間から人工芝の上で部隊内で行われている集会に行かずに寝ていたのだが狐族を中心としている第九部隊の副部隊長である夢見信濃さんに不思議そうにこちらを見つめていた。


「えっと、夢見信濃先輩ですよね。私に何か用ですか?」


しかし彼女は私の言葉を聞いてないのではないかってくらいずっと私を見つめていた。


私は上半身を起こすと狐族特有の尻尾や耳がピーンと伸び驚いていた、そして数秒の間見つめあい、


「君の名前はなんていうのかしら」


「私は第十一部隊に所属している神崎みゆと言います」


名前を名乗ると彼女は首を傾げ不思議そうに


「どうしてみゆが……」


とつぶやいていた。彼女は何か考えている様子だったが私は彼女が何について考えているのかわからずにいた。


夢見信濃はおよそ四年前には第九部隊に所属しており、二年前に起こった大規模なパンドラ・グレイスに対して部隊長として第九部隊を率いた人物だが私は今年から第十一部隊に所属し始めたため彼女とはじめましての関係であるはずなのだが彼女はこちらに何か覚えてることでもあるのだろうかと考えていると、


「みゆちゃん私に見覚えある?」


彼女は私に質問してきた。私は彼女とあった思い出が思い出せないほど彼女に見覚えがないため首を横に振りながら、


「直接会ったことはないと思いますね、ただ二年前のパンドラ・グレイスの記事に載っているのを見たぐらいですかね」


そう言うと彼女の尻尾と耳はしなりと垂れさがり、彼女は私に、


「そうよね、私の勘違いだったわ」


そういい彼女は頭を下げてきた、私は慌ててフォローに入り、


「そんなことないですよ、勘違いなんて誰にでもありますから、だから頭をあげてくださいよ」


元部隊長であり現副部隊長である人物が特に役職を持たない相手に対して、それに第十一部隊に相手に対してという事柄が相まってこの状況は非常にまずい。


もともと第十一部隊はほかの部隊と比べ戦力は弱く立場は低く相当なことがない限りあと間を下げるようなことはない、しかも元部隊長である人物がだ。


もしそんな場面を誰かに見られた場合、昔だったら所族部隊内からの処罰だけではなく相手の部隊からの処罰もあっただろう。今はそんなことはないはずだ。多分……。


「ほんとに大丈夫ですから早く顔あげましょ、ね?」


ちなみにこのやり取りが三分近く続いた。


誰かに見られていたらまずいことになっていたが幸い場所が第十一部隊所属内であり集会の真っ最中であったため特に誰にも見られることはなく問題という問題は起こらなかった。


その後は昼寝スポットを変えようと移動しようと立ち上がり目的地を決めずに歩き始めると後ろから後ろを追うように信濃先輩がついてくる。


(き、気まずすぎる……)


個人的にはいち早く信濃先輩と別れて昼寝を再開したいが変に目立ちたくもない。


そのため私は誰も通ることがないような道を選択し歩いて信濃先輩と別れようとしていたのだが一向に分かれる気配がないがないため無理やりでも撒こうかとも考えたが問題は起こしたくないけれどもどうやって撒こうかと考えながら歩いているとずっと後ろを付けてきていた信濃先輩が、


「どうしたのみゆちゃん、もしかして迷子になっちゃった?」


「いえ、迷子では……」


そう反射的に返事しようと後ろを振り返るとそこは、無意識的に歩き回っていたため今自分がどこを歩いているのかすらわからずにいた。


私は自分の所属部隊内であるから迷子になるはずではないと思っていたが、現在進行形で迷子になっている。


急に何も喋らなくなった様子を見て察したのか信濃先輩が微笑み、


「迷子になっちゃったのね、ほらこっちに行けば知ってるところに出れるから行きましょう」


と私の手を引っ張っていった。私はそんなことはないと言おうとしたが信濃先輩は何かを察したのか私が言う前より先に、


「迷子になってないって言おうとしてもだめよ。だいたい嘘つくときは目がすぐに泳ぎ始めるんだから」


「は、はぁ……」


部隊長まで行くと人の嘘を見破れるぐらい観察眼が凄いなと思っていたが、目が泳ぐのが嘘をつくときの癖であることは初めて会った私たちにはわからないはずなのだが、何故私が嘘をつくときの癖を知っているのか不思議に思った、私自身もこの癖を知らずにいたためより一層不思議に思った。


そんなことを考えていると人通りが多い場所に出ようとしたときに信濃先輩がこちらを見ずに、しかし何かを確信しているかのように聞いてきた、


「みゆちゃん、ちえちゃんのこと覚えてる?」


私はその言葉を聞いた時、徐々に胸が苦しくなっていき幻聴まで聞こえてきた。


『おまえが、おまえがみゆを……』


(苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい)


信濃先輩が急にしゃがみこんだ私を心配するように駆け寄り声をかけてくれたが私には何も聞こえなかった。


私に聞こえてくるのは私に囁きこんでくる幻聴だけだった。


それからもずっと幻聴がひどくなっていき視界が定まらなくなり始め周りの声も聞こえず周りがどうなっているのかもわからない。


ただ胸が張り裂けそうなほど苦しく胃の中のすべてを吐き出すぐらいの吐き気そして何も考えられないぐらい頭が幻聴に支配される。


『おまえが、おまえが、おまえがっ、』


(ごめんなさいごめんなさいごめんなさい)


心の中で幻聴に向かって謝り続けるが一向に幻聴が収まることはない。


『おまえが、おまえが……』



『みゆを殺したんだ』



その後、私は何も覚えていないが人から聞いた話だと私は気を失いその場に倒れた後すぐに救急部隊が来て救急活動が始まったが幻聴によって気を失っただけなので軽い処置をした後救護棟に移され容体を見られた。


私は自分のことで周りに迷惑をかけてる最中に夢を見ていた。


真っ暗な世界に自分と目の前にもう一人の私がいた。


目の前にいるもう一人の私は私に向かって指をさしつつ私に向かって、


「君は神崎みゆじゃないんだよ」


そうもう一人の私は私に言ってきた。

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