不純な性愛というトートロジー

森之熊惨

第1話

 「白木原しらきばる先輩、連絡先もらってもいいですか」三田創さんだはじめは大学2年生で、アルバイト先のきれいで儚い先輩、白木原遥歌を狙っていた。「あ、いいよ。インスタでいい?」遥歌は弱々しそうで儚げだけど、とてもよく通る声をしていた。遥歌のうめき声を聞いてみたいと創は思った。ファミレスのごみ置き場から漂ってくる反吐のような匂いのなかで、洗い場の踏み台に腰かけた創と立ったままの遥歌は、ドリンクバーのコーラを飲みながら夜勤の暇を持て余していた。「先輩って恋人とかいるんですか?」「なに、狙ってるの?やめた方がいいよ」遥歌は微笑みながら愚かな20歳を見下ろしていた。「いや、先輩きれいだなと思って」戦争が始まった年の夏、遥歌と創はアルバイト先でそのようにして知り合った。

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