第17話 As Role of Ethicalist
Writerの隠蔽工作を行った亜種白路はそのウイルスをGossipに撒き散らし、感染したGossipたちによるめぐみさんへのいじめを今も継続している。何も知らずに感染した流浪遺伝子たちは今ようやくことの重大さを理解し、何とか呼吸をするために隠語を自作しては自助努力をしている。
「絶対大丈夫だと言っていたくせに!」「タイミング悪すぎる」
タイミングの悪さはMjustice-Law家がルーラーとしてこの世界に君臨していることの証拠でもある。
いくつかの疑問が残っていた。
なぜ隠蔽工作が成功したのか。
隠蔽工作の成功はルーラーとして絶対的であったスカーニーが協力したとしか思えないが、長年亜種白路や百舌鳥柄からの嫌がらせを受けていたスカーニーが許可を出すということはあらゆる種類の仮説を立てても結論には至らなかった。
スカーニーは返品不可の張り紙と共に衣子さんのもとから帰還させられてしまった。
「真実を話せと言われた。衣子にやられたらやり返せと言われた」
多胡開望も昔衣子さんにそんなことを言われたと聞いたことがあった。
「負けたままで終わるな!男だろう!」
真実をスカーニーは少しずつ話し始めている。
「スカーニーはもうSenested-Xiaoではないけれど、スカーニーであることには変わらない」
スカーニーとして返品されたことも俺たちは理解した。
衣子さんはすでに時空旅人でもないから直接話を聞くことはできない。どこで何をしているのかもわからない。そんな衣子さんがわざわざ「返品不可」としたことにはきっと大きな理由が隠されているんだと思った。
そういえば、オルレアンとスカーニーが父子として向き合うのは初めてのことになる。
恩賜芍薬時代、スカーニーはスカーニーだったし、オルレアンとして帰還したとき、スカーニーはすでにSenested-Xiaoだったからだ。
役職では話せないことも親子としてなら話せることがある。オルレアンは重い口を開いた。
「亜種白路とMjustice-Law家の因縁は根深い。オルレアンの息子だからと言うことで、スカーニーという娘だからということのみが理由になる」
オルレアンは葉巻のような上等なタバコは好まない。誰でもコンビニで買えるようなそんなものを好む。そんなタバコをマッチで火をつける。ライターは石がすり減ると処分に困るから使わないのだそうだ。
「俺たちがこんなふうに安いタバコを吸っていることも気に入らないらしい。直接言われたことがあったなあ。でもそんな類の文句は俺たちの仕事とは関係ないことだ。わかるかな?」
寝る時はパジャマを着る。時々はTシャツで寝る。秋葉原や上野で外国人が外国人のために売っている漢字Tシャツのような、衣料品店で1000円以下で投げ売りされているようなそんな類のTシャツだ。
「もしも粗末な格好をしていたら、亜種白路はそこを攻撃する。Gossipとなった流浪遺伝子たちはそれをバカにされたと思い込んでブランド品を買い漁る。うまくできた経済の仕組みは俺たちMjustice-Law家が作ったと言うんだ」
スカーニーが窓辺に座って外を眺めている。穏やかな気持ちが想像できる表情だと俺は見た。
「スカーニー、何をされたんだ?お父さんに言ってみなさい」
スカーニーはオルレアンの言葉を無視する。
めぐみさんが家の前を通りかかる。運動神経の鈍さから、なぜかよくわからないところで派手に転んでしまう。
「めぐちゃん、大丈夫かな。おい、捜永!監永でもいい、めぐちゃんの護衛の人数少し増やしてあげて」
もしもめぐみさんに子どもができたら、スカーニーはめぐみさんから無視されるのかもしれない。俺はなんとなくMjustice-Law家の不器用さを知った気がした。
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