第14話 Opposite fusion

有名な人ばかりでビビってる。カタログみたいに見せられて、「この人がこの人を演じてくれるよ」と教えられて「へえ!」って興味なんか持てない。


スチュワートとセオ、それから帝都や基実くん。

スカーニーや翠蘭さん、ビル、セバスチャン。

オルレアンとゲオルギとアルバート。

12の象徴カタログが9月中旬あたしの手元にきた。


「金髪と黒髪の差は少しの間は仕方ないとしても、ちゃんと覚えておいてね。君を演じてくれる人だけは最低限覚えておいてね!日本人とそれ以外って覚え方はだめだからね!特に10月以降は外国籍のAmadeusu Juryが本格的になるんだからね!」


監永と捜永が左右から別々の音域で同じくらい大きな声量であたしに言い聞かせてくる。コーヒーとタバコの匂いが混じって息が臭い。


「聞いてる?最近連絡もよこさないし、どうしたかなって心配してたんだよ!ビルはそのこと気にして引退してくれたんじゃないかって、俺もう恥ずかしくってどうしようかと」

「じゃあ、そんな素振り見せなきゃよかったじゃないの」

捜永の目が「このアマ、、、」と目を血走らせた。

「あと捜永や監永のためじゃないよ、元老院の仕事が10月から本格的に始まるからだよ」

「知ってるよ!!!」

監永の唾が左頬に付着する。



捜永や監永も含めて免疫症候群たちは今活気に満ちている。自分達と同じ家業という理由だけで慕っていた免疫症候群たちにとってスカーニーが世界の覇王だった事実は、生活が豊かになるという希望以上に、自分達の見る目の確かさを証明する大きな出来事だったからだ。

よもや自分達の子どもが大学に行けるなんて!と嬉しそうな姿をあたしはリアルに見ることができた。

養父の正宗さんを思い出す。

山蘇野家はこの22日から全ての構成員が処分対象となる。正宗さんが亡くなった後でよかったとあたしは心底運命に感謝した。

対象の一族の血を絶やすことがいかに重要かということをMjustice-Law家の人間なら痛いほど理解できる。


「それからもう、セオの家とかスチュワートの家とか呼ばないこと」

「どうして?」

監永が怒鳴りたい気持ちをグッと堪えるように息を止めた。

「だってわかんないんだもん!!」

監永が息を止めたまま捜永に目で合図した。代わりに説明しろってことだ。そんなにカリカリしなくてもいいのに。

「何のために象徴をお願いすると思ってるの。ダイレクトに読んだら意味ないじゃん!」

「ああ、そうか。納得。じゃあなんて呼ぶの?」

「呼び方はいろいろある。セオの家は夜の家、スチュワートの家は昼の家、めぐちゃんところは夕刻の家って呼ばれる。特にUBYの時はこの時間で呼ばれることが多い気がするなあ」


正宗さんと一緒に過ごした晩夏の夕刻は、コンバインとトラクターのエンジン音、時々ひぐらしが鳴いて、テレビでは日本シリーズが始まる時間帯だ。そろそろ長袖を出そうか、今年の冬は雪が多いだろうか、稲刈りはいつにしようか。

こんな人生があったことさえ想像もできない穏やかな日々を思い出す。

今では本来の自分の血筋を務めるためのリラックス方法となってしまった。

「正宗さん、元気?」

時々そんなふうに今でも呼びかける。正宗さんがあたしと三閉免疫症候群を出会わせてくれた。あの人はブルーカラーで働き、あたしを育ててくれた人だから。


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