恋多き女の子が本当の恋を知るとき

尾長律季

第1話

 やさしくしないで。そう思ってしまうのは、なぜなのだろう。君が、とても小さく見える。記憶の中の君が。顔を赤らめ、ズボンを手で握りしめながら、恥ずかしそうに言うのだ。


「2番目でも、3番目でもいいから。それでもいいから……僕じゃ、ダメ?」


「……」


 答えるまでの数秒間。とても長い時間。私は、下を向いていた君の顔を見ながら、心がざわつくのを感じた。これは、寂しさか、嬉しさか、優越感なのか。あの頃の私にはわからなかった。だって、まだ小学6年生。


(多分、もっと良い人がいるんじゃない?)


 いや違う。これじゃない。そうじゃない。自分がいつの日か言われた言葉を使ってしまえば、自分の気持ちは伝えられない。じゃあ、なんて言えば——————


「ごめんっ」


 私の中から言い訳のような言葉が溢れてくる。あそこから記憶がぼやけているが、多分、少しかっこつけて返事をしたのかな。本当は君に、こう言いたかったはずなのに。


「好きになってくれてありがとう。でも、2番目だなんて言わないでよ」って。

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