第6話
地下をかなり長い時間徘徊した。
途中同じような警察官隊を退去させたり回避したりで、やっと「ここだ」とエキドナの指示でマンホールを出るとかなり太陽は西に近く光り世界をオレンジ色に染めはじめていた。
目の前には《里山公園の入り口》の看板がある。
里山公園は標高50メートル位のちいさな山だが、頂上では街を見下ろせる『高い場所』だ。
だがどうやって追っているのかやはりパトカーや機動隊が包囲していた。
しかしここまでの対応で失敗を重ねたせいか拡声器で何か訴えているが警察官は近づいてこない。
碧たちは警戒をしながらゆっくりと里山公園に入った。
「しかしどうして我々の位置が、わかるんだろうねぇ。魔族探知機でもこの世にあるんだろうか。人間ってなぁすごいねぇ」
駒割部長は少しこの状況になれつつあったのか事態を冷静に分析した。突然スマホが鳴って出る。
「あ、先生? いやいやいや無理っすよ。私だって殺されかけたんですよ!」
その光景を碧、エキドナ、リリスはじっとぃ見つめた。視線に気づきハッと駒割部長がスマホを耳から離した。
「これかい!! ごめんなさい!」
おそらく龍田教師からであろう声がしているスマホを駒割部長は里山公園の茂みに投げ入れた。
「いやぁ、もうしわけ……」
駒割部長が碧たちの方に振り返ると目の前に小さなカメラの付いた文庫本位のドローンが一体、モーター音をうならせ飛んでいた。
「なに、これ」
ドローンのカメラの小さな緑色ランプが点滅と共に赤色に変わった。碧はその僅かの変化を見逃さなかった。即座に駒割部長にタックルを決めると本を落としながら碧に押し倒された。
「え」
碧の顔面のあまりの近さに心ならずも少しドキッとした。
間髪入れずドローンは爆発した。
その勢いと風圧は殺傷能力を十分に備えている事を全員に理解させた。
「う」
倒れている駒割部長の顔の前にまたドローンが現れる。よく見るとパトカーの方から無数にドローンがやってくるのが確認できた。碧は駒割部長の腰を持ちすぐ立たせた。
「頂上の方へ!」
駒割部長は疲弊しながらも全力で走りだす。
リリスを背負いエキドナの手を引き碧も駒割部長を追うように走る。
「うそだろー!! ここ日本だぞぉ!!」駒割部長が叫んだ。
4人の背後で次々と爆発が起きる。
紅葉並木、イチョウ広場、アスレチック遊具場、里山公園内が、どんどん爆発していく。
そんな中、駒割部長が落とした本を拾い上げ連続爆発する様をみつめる人物がいた。
太陽は地平線にかかっていた。
リリスが碧の背中から木々の沢山生える山道を指した。
「そうか! 駒割部長!林に入りましょう!」
《里山公園頂上へ》の看板が見えたが鬱蒼と木々の生える獣道に四人は入った。
すると執拗に追ってきたドローンも操縦が間に合わないのか木々にぶつかり次々と誤爆を繰り返した。
険しい場所もあるが少しずつ頂上に向かっていく。
「わかる、わかるぞ! もうすぐ高いところに出る!」
エキドナは興奮してきた様子だった。
「見ろ!」
エキドナが空を指す。
碧とリリス、駒割部長が歩きながら天を仰ぐと何か大きな入道雲のようなものが里山の上にあった。
駒割部長は立ち止った。いやたじろいだ。
「ど、どら……どら」
流石に碧もソレを目撃し足を止めた。
上空でどれほど離れていてどれほど大きいのか想像もつかない。
巨大で透明なドラゴンが空の上に存在していた。
邪悪そうな翼を何枚も動かし太陽の光を屈折させてかろうじて見えるものだった。
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