第2話
古明地もそんな環境の中で、よく映画サークルを辞めなかったものだと鴨志田は思った。
なにせ鴨志田以外の残り全員が、古明地に敵意を持っていたのだから。
警察もどこで聞いてきたのか知らないが、そのことを把握しており、いくつかある容疑者リストの中に映画サークルのメンバーを加えていた。
鴨志田を含めた全員が、事情徴収を受けた。
鴨志田はすぐに容疑者リストから外されたが、残りのメンバーは幾度となく警察から話を聞かされているようだ。
鴨志田が外されたのには訳がある。
鴨志田には幼なじみがいて、大学生にもかかわらず何年も前からその幼なじみと結婚すると決めていたからだ。
ゆえに古明地にちょっかいを出すこともなく、古明地にふられることもなかった。
古明地もそのことは知っていて、サークル内の誰よりも鴨志田と会話をしていた。
安心感があったのだろう。
鴨志田はサークル内の誰よりも、動機がなかったのだ。
「参ったよ、まるで犯人扱いだ」
「私も。古明地の住んでいるところなんて、知らないのに」
久しぶりのサークルで、鴨志田以外のみながそうこぼしていた。
古明地の住んでいる場所は、サークルのメンバー全員が知らなかったが、サークルメンバーがアパートの住人と違うところは、アリバイがなかったことだ。
川北は会社員だが、その日会社の方針で有休消化をしていた。
おまけにどこにも出かけていなかったそうだ。
そして一人住まい。
アリバイなどない。
宮古は専業主婦だが、夫は仕事で子供は会社。
これはたアリバイを証言してくれる人はいない。
宍戸、どすこい、エイリアンは大学生で、その日授業もなく一日下宿にいたと言う。
これまたアリバイを証言してくれる人がいない。
その点は鴨志田も同じだが、鴨志田は古明地と一番仲が良く、そして動機がない。
その点が他の人たちと違った。
捜査線上から外れたのだ。
「いったいだれが古明地ちゃんを殺したんだ」
「はやく犯人が見つからないと、私が犯人扱いされちゃうじゃない」
映画のサークルに集まったのに、映画の話などない。
まあ、当然と言えば当然だが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます