6🏡ルナの災難💓

オカン🐷

第1話 出逢い

「ちょっと待ちなさいよ。今のわざとやったでしょ」

「まちなちゃい」


 地下鉄のホームにレイの少し高めの声が響いた。

 それに続いてルナの可愛らしい声も。

 傍らには白杖が転がっていた。


「何だと、生意気な」


  男はレイに掴みかかろうとした。


「うわーん」

「あら、どうしたの?」

「ほら、あの人が」


 ルナの警報器のような泣き声が注目を集め、男は回りを見回して慌てて立ち去った。


「あっ、拾いますから動かないで、ルナちゃんもじっとしててね」

「うん」


 白杖をついた男性がホームに降り立ったところに、すれ違って行くサラリーマン風の男性が白杖に足を突っ込んで蹴り上げた。

 カランという音を響かせて白杖がホームに転がった。


「本当に何を考えているんだか、信じられない。このヒモを手首に掛けておいたほうが、あっ」

「大丈夫です。ありがとう」


 白杖のヒモが切れていて、また同じようなことが起きないとも限らない。

 大丈夫と言ったけど、レイは気が気ではなかった。

 しばらく様子を見ていたが、意を決して声をかけた。


「あの、どちらに行かれるのですか?」

「子どもさんが泣いていたようでしたが、大丈夫でしたか?」

「ルナ、なくの」

「アハッ、姪っ子の嘘泣きです。いつもお兄ちゃんたちにやられると警報を鳴らすんです」

「ハハハッ、ルナちゃん、ありがとう。悪者をやっつけてくれて」


 ルナは兄たちがやるように、胸の前で腕を交差させた。

 何かのキャラクターが悪者を撃退したときのポーズだった。


 訊けばレイの住まいの哲平の事務所に用があると言う。

 いつもならヘルパーさんを頼むのだが、急な話だったのでヘルパーさんが見付からなかったという。


「やっぱり、タクシーにすれば良かったです。ちょっと冒険をしてみたくなったのですが、1人では無理でした」


 男性は少年のように笑った。白い歯がこぼれ、清潔な印象がして笑顔が爽やかだった。


「兄の所へはお仕事か何かですか?」

「ゲームの音付けの仕事をしているんです」


 

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