第15話 物語の読後感を意識してみる ~読後感は、どんな感じがいいんでしょうね? 相生にはさっぱりですよ? 分からないって意味で~



 読み終えた時に感じる何か、が、読後感、というものだと思います。




 結論から言ってしまえば、読後感はそもそも読者のものなので、作者がどうこういうのはおこがましいと思います。


 ただ、作者は、読者の読後感をある程度方向づけることは可能でしょう。


 相手の感情を狙って動かす。作者の醍醐味でもあるかと思います。


 ただし、思い通りにはならないし、狙ったことと逆になることさえありますよー、という話ですね。




 さて、狙える、とはいっても、読者全員を、ということはまずありえないです。読者は一人ひとり、どのように読むか、どのように感じるかは千差万別ですから。


 大きく分けて、読み方は、肯定的に読むか、否定的に読むか。特に、否定的に読まれてしまうと、こちらの狙いとは逆になることも……。


 そもそも、感情は個人のものですよって話ですよね。


 それでも、大多数の読者を相手に、作者が狙って、とある感情を引き出そうとすることは可能かと思います。




 感情も細かく分けるとたくさんありすぎるので、6種類で考えましょうか。


 いわゆる喜怒哀楽と、そこに愛憎を加えて、6種類ですね。


 物語を読み終えた時に、喜び、怒り、哀しみ、楽しさ、愛しさ、憎しみ、のいずれかを読者に感じさせるように、書き上げる。言うのは簡単ですけれど、やるのは簡単ではないですね。


 まあ、そんなにはっきりと分類できる訳でもないし、混ざっていて当たり前、です。ただ、分類した方が狙いやすい。




 なんで、こんな話をしてるんだって、ことですけれども。


 相生が書いた『百年の恋も冷めるすれ違い幼馴染の地獄堕ち ~もし僕が先に告白していたら、何かが変わっていたのだろうか?~』の読後感が最悪な感じだったんですよね。


 そもそも、これを書いた時の相生は、読後感とか、ひとっつも、これっぽっちも、意識してませんでした。


 それなのに、淡々と、ものっすごい後味の悪いバッドエンドを書いた訳です。6種類の感情の中だと、怒り・哀しみ・憎しみ、という負の感情の方が引っ張られる感じの。


 いやー、それが嫌ならそもそもバッドエンドを書くなよって話ではあるんですけれど。


 ……相生には恋愛的成功体験が乏しい(ないとは言いたくない……)ので、ハピエン妄想が難しくてですね。どうしてもバドエン寄りになるんですよ。メリバとか、ビターとか、ですね。


 そこで、読後感、です。


 物語を読んでいくと、色々な感情が引き出されます。それが読む楽しみでもある訳です。


 だからといって、最後の最後まで、暗い気持ちに、マイナス思考に、苛立たしく、なるような物語って、どうなんですかね?


 作者のヘイトコントロールとか言う言葉がありますけれど、最後まで読者を苛立たせるような物語は読もうと思ってもらえないんじゃないですかね……。


 だから、読後感、です。


 読み終わった瞬間は怒哀憎ではなく、喜楽愛の方に感情を寄せておきたい。物語の途中で怒哀憎に激しく揺さぶられたとしても、最後の最後には、ほんの少しでも喜楽愛を湧かせたい。


 それが、読後感、です。




 読後感は、読み始めとか、読む途中とかにあるものではなく、読み終えて出てくるものです。


 だから、ラストシーンをよく考えるといい。


 たとえ、途中で大切な恋人が他の男に奪われても、支えてくれた家族が殺されても、最後の最後に少し希望を含ませるだけで、読後感だけは改善できるんです。


 つまり、ですね。


 なんかいい感じの「オチ」をつけましょう、って話です。それで喜・楽・愛のどれかをちょこっとでも引っ張りましょうよ、って話です。




 そもそも相生は、自身の書いた3つの短編をNTR系統と呼んでいます。恋人を誰かに奪われる物語で幸せを感じるのは変ですよ? そういう性癖なんだと言われても、相生は変ですよと言いたい。少なくとも相生にはそんな性癖はないです。


 だからといって、最後の最後まで、マイナス感情を引き出してどーすんの、ってことですね。


 そこで、なんかいい感じの「オチ」で、軽くフォローしてみる。たったそれだけで、物語全体としては怒・哀・憎だとしても、最後の最後でちょっとだけ、和らぐんです。和むと言ってもいいかもしれない。


 相生は最初の『すれ違い幼馴染』で、バッドエンドをバッドエンドのまま、終わらせました。


 そういう小説があってもいい、という意見も当然、あるでしょうけれど、それはそれ。


 ラストシーンでちょっとだけ、回復魔法をかけるんですよ。それで物語全体としては残酷でも、最後に前向きになれるんです。


 これが相生の、読後感、の話です。




 バドエンをバドエンのまま終わらせたことを反省した相生は、『寝取られ幼馴染の地獄堕ち ~あんなに好きだと思っていた相手が、今では気持ち悪くて見たくもないと思うオレは歪んでいるのだろうか?~』で、読後感を意識して、なんとかしようと試みました。


 だからといって、全体的には厳しいです。だって、幼馴染の恋人が他の男にヤられちゃってる訳ですからね。そんなん、いい気分になれる訳がない。


 いわゆるヘイトコントロールですね。浮気女への恨み、憎しみ、そういったものを解消する、ざまあな展開……。


 で、そこで浮気女をズタボロにして終わらせる、のではなく……。


 主人公が最後に前向きになれるかも……って、思わせて終わらせる。必要以上に敵役は貶めない。この必要以上というのも、読者によって違うんですけれどね……。


 ラストシーンは、寄り添ってくれるもう一人の幼馴染がいる、と。これから主人公には乗り越えなきゃいけない何かがあるんだけれども、そこには助けてくれる人がいる、と。


 そういう、ちょっとでも未来に期待が芽生えるラストシーンで、終わらせる。


 そんな感じです。


 でも、ラストで新しい彼女ができましたー、ってのは、え? この前までの苦しみは何だったの? 実はあんまりダメージなかったんじゃないの? ってなるから、やらない。それは物語全体を破壊してしまう可能性があるから。ハピエンならいいじゃん、とはなりませんよ?




 実際、このふたつの物語の差は、読者によるポイントの差として、はっきりと数値になっていますからね……。




 やっぱり読後感って、大事なんじゃないですかね?


 ……ポイント入れるボタンは、読み終わったところにあるんですよ、みなさん。


 読後感って、大事だと思いませんか?




 この、読後感を意識して書く、というのは、『情けない元カレの未練旅断ち ~オレが前を向いて先へと進むために、溜め込んで澱んだ想いをぶつけるのは許されるのだろうか?~』でも、相生は頑張りました。


 しかも、こっちは、クライマックスの、電話の後に泣き崩れてスマホを手放してしまうところを伏線にして、それをラストシーンに繋げてます。


 もちろん、NTR系統と作者である相生自身が呼んでいるので、物語全体としてはハッピーエンドではないです。でも、最後にくすっと笑って読み終えられるように仕上げました。


 このラストシーンで、読後感はかなり違うと思います。


 なんか、いい感じの「オチ」を、うまくつけるんです。そういうことです。


 実際、おいおいおい! そのスマホオチでシリアス飛んでったわー!? って感じの笑える感想も頂いています。(オチのやりすぎ感には目をつむります。)




 繰り返します。読後感は大事です。大事にしましょう。


 ……ネット小説では、ポイント入れるボタンは、読み終わったところにありますよー。


 読後感って、大事だと思いませんか? 思いますよ、ね……?






 ……でも、ネット小説大賞の一次を通過したのは『すれ違い幼馴染』の方なんですよね。一番、読後感の悪いやつ。なんで? いや、マジでなんで?





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