第4話


「・・・・お前は誰にでも笑うのだな」


「楽しいことがいっぱいですもの」


クレオはため息をついて、ロレーヌから手を放した。


「父上や母上や弟が、お前に会いたがっている。お前がどういう人物か、警戒しているのだろうな」

クレオが心底不機嫌そうに言う。


「あら」


「お前には誰も会わせない。お前は何もしなくていい。面倒なことは私に任せておけばいい。・・・お前は何もできないからな」


クレオからしてみれば、ロレーヌとは愛のない結婚だ。ロレーヌに、クレオの家族を会わせるのが嫌かもしれないなと、ロレーヌは困ってしまってにこにこ微笑む。


クレオは呆れたように鼻を鳴らすと、ロレーヌの腕をつかんで歩き出す。

「行くぞ。もう茶の時間だ」


強引な人だなと、ロレーヌは呆れた。強引に腕を引っ張られ、まるで乗り物に乗っているようだと、落ちそうな自身の帽子を押さえながら、クスクスロレーヌは笑う。


するとクレオは急に立ち止まり、ロレーヌの顔を、困ったような呆れたような不機嫌なような形容しがたい表情で見降ろしてくる。


「・・・・・・?」


「お前は」


「・・・?」

にっこりロレーヌは微笑む。


「・・・・いくぞ」

クレオは歩き出す。

面白い人だなと、ロレーヌは微笑んだ。



それからすぐに、ロレーヌのもとに赤髪の騎士の男と、赤髪の侍女がやってきた。


「奥様の護衛をさせていただくことになった、シャパード・モーリスと申します」


「今日から奥様の侍女に任命されました、シャーロット・リべリスとお申します」



シャパードは、膝をつき、ロレーヌに挨拶し、シャーロットはカーテンシーで、ロレーヌに淑女の挨拶をする。


「あらあら、どうしましょう?初めまして、私ロレーヌと言います。私の名前は知っているわよねぇ。楽にして頂戴。私堅苦しいの嫌いなの」

ロレーヌは微笑みながら、シャパードとシャーロットの手を握る。

「そうだわ。さっきまたクッキーを焼いたの。お口に合わないかもしれないけど、よろしかったら、ぜひ食べて頂戴。お茶もいれるわね」


「奥様、お茶入れは私がいれます」

慌ててシャーロットがいうので、ロレーヌは彼女の肩に手を置いた。


「いいのよ。私お茶入れるの好きだから。また今度あなたにお茶入れるの頼むことがあるかもしれないけれど、今日はいいわ」


「そんな。旦那様に、私がおこられてしまいます」


「私が強引にやっているといえばいいわ。さぁ、今日はあなたたちの歓迎会よ。パイでも焼きましょうか?」


「奥様!?」

王族の側妃が自ら調理するというので、驚愕するシャーロット。

ロレーヌは笑いながら、調理場に行くのを止めようとするシャーロットをいなした。

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