第2話
その後食事の準備を殿下がしてくれ、ロレーヌは殿下と食事をした。ロレーヌには難しい国の仕事はわからない。殿下の外交の話を、ただロレーヌはにこにこ笑って聞いていた。
殿下はもう一度ため息をつくと、暗い顔になり俯く。
「ロレーヌ、お前の父親は力を持ちすぎている。国への人質のために、お前は私に嫁がされてきたんだ。もう私には妃がいるというのにだ。
余計な真似をするな。下手に動けば、お前は消される。ただの国の駒だ。私にも弟のアレクという優秀なスペアがいる。私もすぐに消されるだろう。
側妃になったからには、余計な真似はするな。」
「はい」
にこにこにこロレーヌは微笑んでいる。
「お前との子供も作るつもりはない。子供が権力争いにでも巻き込まれたら、悲惨だからな」
「はい。確かにそうですわね」
ロレーヌはいつも微笑んでいる。
クレオが女が興味なさそうな仕事の話をしていても、楽しそうに。
正妃のシルビアは仕事の話をすると、怒るし、不機嫌になる。女とはそういうものだと思っていた。もちろん、シルビアだけを愛しているが。
怒りもしない笑っているだけのロレーヌのことを、内心クレオは苛立ちとともに、馬鹿にしていた。けれどもにこにこしているロレーヌを前にすると、つい色んな愚痴や仕事の話をしてしまった。
ロレーヌのほうはというと、クレオのことをいい人認定していた。ロレーヌのこと好きでもないし、結婚したくもないのに、クレオはなんだかんだ言って、優しさがにじみ出ている。
ロレーヌは、こんなに優しくしてもらったのは初めてだ。
もちろんロレーヌは貴族だから、衣食住は完備されているが、家族から関心をもたれないし、優しくしてもらった記憶がない。
元婚約者のアロイも、とびきりの美男だが無口で何を考えているかわからないタイプだったので、落ち着かなかった。
ロレーヌの次の夫は暴力夫だし、愛人のことしか言わないし、浪費家で、ロレーヌには全く金を渡さないし、いつも働いたりして食いつないできた。
それと比べたら、ここは天国である。
ロレーヌは目の前のクレオのことをうっとりと見つめた。
美しいプラチナのような金髪に、吊り上がった世にも珍しい菫色の瞳。
もちろんロレーヌは、クレオに愛されることもないだろうけれども、こんな綺麗な王子様とお話ができるなんて夢のようだと、ロレーヌは頬を赤くして微笑んでいた。
ロレーヌが子供を産めないと嘘をついたが、クレオには伝わっていないようだった。ロレーヌの家族が隠しているのだろうか。
どうでもいいことだ。
今度妃さまとクレオ様お二人におそろいの、刺繍のハンカチでも作って送ろうとおもったが、そもそも側妃からの贈り物は、正妃様からするとお嫌かもしれないなと、ロレーヌは頭を悩ませた。
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