土の魔法、真価を発揮!

「腕……大丈夫ですか?」

「あぁ……いや、この腕は切り落とさねぇとな」

「えっ?」

「骨が折れるとな、治しようがねぇだよ。血色が悪くなるって言ったらいいのか? 腕が腐るんだ」

 もしかして、この世界は骨折を治せないのか?


「いや、骨を固定させればいいんじゃないんですか?」

「固定? どうやってやるんだ、もしかしてアンタ骨折も治せるのか?」

 おぉ、マジか。骨折の時は確かギプスをはめるんだよな。ギプスは石膏で固めるんだっけ? 土でも代用できるかな? 物は試しだやってみるか。


 俺は男の折れた部分に手をかざして、意識を集中する。少し間違えると症状を悪化させるかもしれないから慎重に。腕を巻くようにゆっくりと創造していく。男の腕に少しずつ土でできたギプスが創造されていく。


「うおぉ、な、なんだこれ」

 できたギプスは少し形がいびつだが、立派に役目を果たしてくれそうだ。上腕から手首にかけてできたギプスを始めて見る男は何が起こっているのか理解できていなかった。


「これで2、3ヵ月ほっとけば骨は完治するはず。簡易的な処置ですけど、後は寝る時とかなるべく腕を高い位置にしてくださいね、じゃないとほんとに腐るから」

「ほ、ほんとに治るのか?」

「あぁ、まぁ」

 俺が男とやりとりをしていると、男たちが駈け寄ってきた。あぁ、なんか言われるのかな。土属性って確かこの世界じゃ底辺のように扱われるみたいだし。どうせアイツらみたいに人の事を下に見―――


「そこのあんちゃん! 危なかったよありがとう!」

「えっ?」

「あんな土の魔法見たことねぇよ! すげぇんだなあんちゃん」

 なんか感謝されてる? この人達俺の戦い見てただろ。


「おい、お前腕に巻き付けてんのはなんだ?」

「あぁ、これか! これはこの人の魔法で骨折した腕を固定してるんだってさ、寝る時に腕を上にあげたら切らなくて済むらしい」

「なに!? そりゃほんとか!」

「骨折し放題じゃねぇかそれ」

 なんだよ骨折し放題って。骨を何だと思ってんだよ、後寝る時の仕草で腕を上にあげすぎな? 挙手みたいになってるから。少しだけでいいんだよ。


「あの、皆さんは俺を馬鹿にしないんですか?」

「えっ、なんで助けてくれたのに馬鹿にするんだ?」

「だって俺は土属性の魔法を使うのに……」

 俺の言葉に覆いかぶさるように男たちは豪快に笑った。何かおかしいことを言ったのか?


「俺たちも土属性だからなぁ! その気持ちわかるぜ」

 なるほど、みんな土属性なのか。俺と同じ……。


「ふっ、なんだよそれ」

 俺は自然と笑みがこぼれた。この世界に来て散々な目に遭ったが、別に悪い世界じゃないんだな。


 土の魔法、攻撃にも防御にも使えないとか王様が言ってたが、全然そんなことないんだけど、むしろなんでもできるぞ。……魔力が無限にあればだけど。


「よし、お前らここを離れるぞ! 村に帰って報告だ」

「でも、どうするんですか? 怪我人が多くて、それどころじゃ……」

 確かに動ける男に比べて怪我で動けない男の数が圧倒的だ、これじゃ帰るにも相当な時間を使ってしまう。森に潜むのはライガーだけじゃないだろうから、一度に怪我人を運ぶ手段が必要だ。俺は顎に手を当て、少し考えた。


 そういえば台車を大きくして、手すりを取り付ければ人力車みたいになるか? と、なれば大の男が複数人で引ける巨大な人力車を早速創造しよう。よし、大きさは全員が乗れるほど、車輪もそれに耐えれる大きさにして、でも重量は軽くしないと引けなくなるだろうから中は空洞にして強度は最も強く―――


 俺が創造をすると次第に人力車を形を成していき、ついに完成した。これなら男たち全員が乗っても問題ないはずだが、道がデコボコだからそれをどうにかしないとな……。


「おぉ! これはなんだ? 馬車みたいだが」

「これは人力車ってやつですよ、手すりと台の間に人が入って力で押すんです。ただ土で創ってるから重いかも知れませんが」

 人力車もこの世界では知られてないのか、だとしたら少し説明する必要があるな。俺は男たちに説明をして、まず怪我人を台の上に乗せた。重量的には……問題なさそうだ。全員を乗せて、動ける男数人で人力車を引き始める。重いから初動が肝心、車輪を動かすため男を両脇に配置し一気に押す。


ズズズッ


ちょっとずつ人力車が動き始める。よし、そろそろ大丈夫かな。


「あとは、道を創造すれば……」

 俺は少しでも人力車が動きやすくするため、少しずつ地面を平らにする土を創造していく。これでなんとか一段落はついたかな? 帰るか……村に。

 

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