第十一話 バズりの結果とビジネスチャンス

「なるほど。経緯は把握させていただきました。そういうことでしたら、何卒、秋司のこと、これからよろしくお願いいたします。ご存じの通り、秋司は見た目は良くても中身がポンコツでして……」

「ちょ、モモちゃん、ひどいっ」

「秋司さんは黙って下さい」

「……ぶぅ」


 ソファーに腰かけた俺と百々とうどうさん。その横には直立不動で立たされたまま一連の経緯を説明した茜さん。いまはぷくっと、ほっぺを膨らませた顔を晒している。


 百々さんは、そんな茜さんをスルーしたまま、再び俺に向かって頭を下げてくる。

 しかし今度は謝罪ではなく、パーティーメンバーとしてよろしく、ということだろう。なので俺も同じように頭を下げる。


「こちらこそ、よろしくお願いいたします」

「さて、早速ですが先ほどのライブ配信で秋司がやらかした結果、こうなっています」


 そういって、百々さんが二つ折りの板を開いて、内側を見せてくる。

 どうやらとても薄いがパソコンのようだ。


「これは?」

「少数のどうでもよいクレームと、大多数は木村さんへのツリー合わせの依頼、ですね」

「あ、スキル習熟スキル──」


 茜さんが両手を合わせながら呟く。


「そうです。そして、私も配信を見せて頂いていたのですが、ツリー合わせの受け手の条件もあるのでしょう、そうそうたる方達から依頼が来ていますね」

「──確かに、これはすごいわね。かなり、面白いことになりそう、ね。モモちゃん」

「ええ、全くです」


 茜さんが百々さん開いたパソコンの画面を見ながら感心したように呟く。そして茜さんと百々さんは二人してとても楽しそうだった。


「──えっと、つまりはどういうことなのかな、茜さん?」


 俺はそんな二人をみて、とりあえず聞きやすい茜さんに尋ねる。


「とてもよいツテと、かなりの金額を稼げるチャンスってところかしらね。何せ世界で初めてスキルツリーだから、言い値でいくらでも吹っ掛けられるしね。相手もそれを払える財力持ちが揃ってる。例えダンジョン管理組合にマージンはとられるにしても莫大な金額になるはず。あ、もちろん、八郎さんにツリー合わせをする気があれば、の話しだけど」


 とても楽しそうな茜さん。

 そのまま引き継ぐように百々さんも続ける。


「はい、その通りです。ただ、スキル習熟スキルはとても貴重なスキルですので、完全に独占しようとするのはかなりリスクが高いと考えられます。私としては依頼をされてきた探索者達のうち、有力な数名だけでも対応して、味方につけておくのがお薦めですね」


 そういって俺の返事を待つようにこちらを見てくる女性陣。

 どうやら俺の選択待ち、らしい。

 俺はしばし考え込んだ末に、二人に答えようと息を吸い込んだ。


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