BLである必然性って必要?

 ちょっと前にTwitter(X)で「BLである必要がわからないというコメントに不満」というポストを見ました。BL作品に「BLでやる必要ある?」という感想に心を痛めている、とのことでした。これだけだと文脈がよくわかりませんが、嫌がらせのコメントの可能性が高いですね。BL作品として世に出しているものに「BLである必要ある?」は失礼千万だと思われます。


 とは言え、「BLでやる必要ある?」というコメント自体は否定できないなと思うのです。別にBL以外でも「それって~である必要ある?」ということはたくさんあるからです。では、どういう時にそんなことを思うのでしょうか。


 それは主に、キャラクターにブレを感じるときです。このエッセイ書いてる人は明確に「このキャラは同性愛者である必要はあるか?」と感じたことが複数回あります。その作品群はあらすじがとてもよく似ているので、要素だけ抜き取って説明してみます。こんな感じです。


 先天的な障害などを理由にこっぴどく虐められている女子が主人公。辛くて死にたいと思った時に声をかけてくれた女子がいた。主人公はその子が好きになる。しかしいろいろあって恋敗れ、誰かしらが死ぬ(主に主人公)。


 この手のあらすじの話を何度か見たので、もしかしたら何かしらのテンプレなのかもしれないと思います。しかし、何度考えても主人公が「同性愛者」である必然性が見いだせないのです。


 そもそも、この手のテンプレは最初の「こっぴどく虐められている主人公」の段階でなかなか不快なことが多いです。例えば杖が歩行に必要な人がいたとして、それだけでいじめの対象になるのかかなり疑問です。これが教育機関内であれば、確実に問題になります。そして障害の程度にもよりますが、一般の生活が困難であれば支援学校に通うのが普通かと思います。


 まあ小説なんて妄想の世界なので好きに書けばええがなという気持ちもありますが、そこは全世界に発信しているという点を忘れて欲しくないなあと思います。例えば聴覚障害があるという点だけで酷いいじめを受けるという作品を当の聴覚障害がある方が読んだら、どういう気分になると思うでしょう。別に障害に限った話ではないです。本人の性質によりどうしようもないことで虐められる描写を書く時は、その性質について理解して書くことが重要です。そうでないと、作者も当事者からすれば「障害を理解しないいじめっ子」と同じになってしまいます。


 これと同じことが「同性愛者」にも言えると思います。虐められて他人を信じることができなくなった主人公に優しくした存在に対して、主人公は恋に落ちます。でも、それって本当に恋なんでしょうか?


 同性愛者の書くエッセイなどを読むと、やはり最初は「自分が同性愛者だ」と気がついて受け入れるということに時間がかかるようなのです。それは人それぞれだと思うのですが、「虐められている時助けてくれた、これは恋!?」というのはかなりリアリティがないと思います。


 そして恋に敗れてあっさり自殺をするのもよくないですよね。同性愛者であることは死にたくなるような辛いことなのでしょうか。「小説なんだからどんなキャラがどんな恋愛してもいい」とは思うのですが、自殺に関する話はその理由を持つ当事者のことを少しでも考えてほしいと思います。


 そして「どうせ小説なんだから何を書いてもいい」とは思うのですが、せめて人に見せるものは多少なりの配慮が欲しいと思います。理由もなく障害を背負わされ、理由もなく虐められ、理由もなく失恋して理由もなく死ぬ。何でこの子は死ぬ必要があったのかな、この作者は何が書きたかったのかな、ただこの子が苦しんで死ぬところが書きたかったのかな、障害や同性愛はその小道具なのかなと思います。


 冒頭の話に戻ると、最初から同性愛の話が書きたかったりキャラをイチャイチャさせたかったりという目的で物語を書くのは良いことだと思います。しかし、意味もなくキャラを苦しめて自殺させる目的で同性愛を使うのは個人的に嫌だなあと思います。


 キャラを苦しめるなら苦しめるで、必然性は必要です。意味もなくキャラを苦しめる虐待ものというジャンルも世の中にはあります。それを意識するにしても、やはり物語である以上キャラクターの属性や行動に意味は欲しいところがあります。


 とりあえず、病気や障害、マイノリティを作品に登場させるなら、少し背景を勉強してからでも遅くはないと思われます。個人的に、作文の作法以上に大事なことだと思います。どんなに上手な文章でも、全盲の人が白杖すら持っていないのでは話にならないので……。

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