討伐

カルシュは、大声をあげた。

「うおおおおお!!!」

村人たちも大声をあげる。


「いくぞおおお!!!」

「うおおお!!」

村人はカルシュにつられて声をあげるが、前線にでるものは誰一人としていなかった。猟銃を構え、臨戦態勢。


 遠くでみていたミユナは、ため息をもらす。


 カルシュは盗賊たちをあしげにする。拳銃は一切つかわず、手で殴ったり脚でなぐったりして、盗賊たちに応戦する。盗賊たちは銃をもっていたが、カルシュが盗賊の群れの中心に位置どったので下手に発砲できずにいた。


「ズオオオオ」

 巨大な星間アーマーが、その後方でカルシュめがけて平手でおしつぶすように腕をふりさげた。

《ベシャリ!!!》

 肉片がとびちる。潰れたのはカルシュではなく、2,3人の盗賊団だった。

「あははは!!!こりゃ失敬」

 星間アーマーの胸部のスピーカーから声がした。また、例の地下から通信でその光景をみている男がいた。“グラッツァ盗賊団リーダー、グラッツァ・ラオビエル”だった。彼はスピーカーを通して声をはりあげた。

「どうもごきげんよう!!私はグラッツァ、盗賊団の頭領です!!お手合わせよろしくお願いいたします!!」

 そういいながら、巨大な星間アーマーの両手をあわせたり、なぐようにはらったりする、そのうちにも盗賊団が10人ほどまきこまれて、怪我、ひどい場合は死んでいる。だが星間アーマーは、まるで動きをとめなかった。そしてどこから湧くのか、どんどん盗賊団の人数はまた10、20と追加されていくのだった。

「どんだけいるんだよ、ロジー!!!」

 カルシュは声を張り上げる。ロジーはサトナにいう。

「いまよ!」

 サトナが6角形の機械を天に掲げるとそれはその中心から棒をつぎだし、棒からハネがとびだし、プロペラの形状になった。それはドローンとなり、上空にとびたった。そして、あるホログラムを投影する。カルシュの宿敵、ネロの姿である。それは星間アーマーをすりぬけ、盗賊たちをかきわける、やがてカルシュの前にくると、付きまとうように周囲を旋回しはじめた。そしてカルシュはその標的めがけて、弾丸を放った。

《シュバババババババ》

 おどるように回転しながら、足や体を敵の動きをよけながらうごかし、ドローンが投影するホログラムをうちぬく、その弾丸はホログラムをつきぬけると必ず“敵”盗賊団に命中した。

「うわああああ!!!」

 盗賊団はほぼすべて、それによって地面にひれふした。


 瞬間、ミユナは唇をなめた。

「しめたわ」

 トリガーをつよく握る。銃口は星間アーマーに向けられていた。



 星間アーマーの胸部がうちぬかれる。ノイズまじりの声がひびいた。

「あらああああ!!」

 ぐらりと姿勢がくずれ、星間アーマーは尻もちをついた。

《ズドン!!ズドン!!》

 容赦なく弾が撃ち込まれ、やがてコアが露出する。

「死ね、死ね!!くたばれ!!!!」

 狂喜のほほえみをみせながら、ミユナは岩陰からスナイパーライフルを乱射する。その暴れる手足に巻き込まれ、カルシュのドローンは破壊された。やがてコアがほぼすべて破壊された。ミユナは一息つく。

「やったか……」

 だが、コアの周辺からドローンが浮き上がると、コアを修復しはじめた。

「まだか!!!」

 そしてミユナがまたもやトリガーに手をかけた。その時だった。

《カチッ》

 銃弾が、発射されない、ミユナは手持ちの弾丸を確認する、もう、物資はそこをつきていた。

「しまった」

 カルシュは、すぐさま状況をさとった。

「俺がやるしか……」

 しかし拳銃は、電撃弾だ。ドローンも死んでいる。冷や汗がでてくる。


 一方サトナは、スマートガジェッドの中のロジーに話しかける。

「ねえ、あなたは“ネロ”を投影できるの?」

「できるけど」

「やってみて……」

「はい」

 その瞬間だった。サトナは走り出して、星間アーマーとカルシュの方向に走り出す。

「やめっ……」

 ロジーが止めようとした瞬間、サトナは、持っていた拳銃をカルシュになげた。キャッチするカルシュ。カルシュは手をじっとみつめ、やがて前をみる。と、いままさに上空に持ち上がった星間アーマーの巨大な手が、目の前のサトナへ手を振り下ろす瞬間だった。サトナは、目線をおくる、その目線の先に、憎むべきネロの姿があった。

「……!!」

 カルシュは、頭より早く腕がうごいた。拳銃をかまえ、うちぬいた。

《ズドンッ!!!!!》

その弾丸は星間アーマーのコアをつきぬけ、星間アーマーは奇妙な声をあげる

「ガガガガガガ」

しばらく動きをつづけようとしたが、やがて動作を停止した。


カルシュは、少女をだきしめた。ロジーは、カルシュに延々と謝っていた。


 帰宅の途中、バイクの後ろにまたがりサトナはカルシュに質問をなげかけた。

「ねえ、どうしてそんなに拳銃が苦手なの?」

 カルシュは戸惑いつつも答えた。

「昔、冒険者になりたがってた幼馴染がいた、彼女はエイムが苦手で、俺がエイムの腕をみせるたびに、困った顔をしてわらった、俺がどんなに教えても上達しなくて、俺は才能ってやつの不条理さを知ったんだ、強いっていう事は、いい事ばかりじゃない、それだけが誰かを傷つけるトゲになる事もある」

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