We're Buddies

佐久間清美

本編

プロローグ

脱退 1/2

 2023年1月。


「みんな、本当にごめん」


 急遽集められた会議室。


 頭を下げた恵麻ねえに誰も――5人のメンバーも運営スタッフたちも声をかけない。


 いや、の方が正しいのか。


 2019年にデビューしてから、私たちは地べたを這いつくばっている。


 所謂いわゆる地下アイドル。


 地上波の歌番組なんか出たことないし。


 夢のまた夢だし。


 それでも、最近は全国各地のフェスティバルに呼ばれることが増えた。


 短く小さい記事でもアイドル雑誌に取り上げてもらえるようになった。


「これからだね」


 キラキラ輝くアイドルスマイルで言ったのは恵麻姉なのに。


 彼女はやらかした。


 私たちでも知らなかった不倫、妊娠をすっぱ抜かれたのだ。


 【地下アイドル『薔薇のpetalペタル』のメンバー・大島恵麻えま、ファンを裏切る行為 許されざる恋&妊娠!】


 一般の人は誰も知らないグループ。


 ネット記事に出てしまったスキャンダルはセンセーショナルで、ファンだけじゃなく、私たちを知らない人の好奇心をかきたて。


 大炎上した。


 こんな形で知名度が上がってほしくなかった。


 正直、個人的にも迷惑だった。


 長年一緒に活動してきたメンバーに対して薄情?


 仕方ないじゃない。


 一部の男性アイドルと違って、女性アイドルには寿命がつきもの。


 だから、解散後を見据えなきゃいけない。


 私は、女優として活動していきたい。


 最近漸く、モブだけど、その他大勢の一人だけど、役を貰えるようになったんだ。


 記事が出た直後、真っ青な顔をして頭をさげた恵麻姉。


「なにしてくれてんのっ。私たちがこれからやってわかっとるやんな!? アホボケカス――」


 なんて声をかければいいのかわからない私たち4人。


 対して、真っ先にブチギレたのは最年長でリーダーの真子まこねえだった。


 普段ならキレた彼女を止めるのは恵麻姉の役目。


 でも、今回は彼女がやらかしているから

「真子姉、一旦落ち着こう」

 和美わみ姉が声をかけていた。


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