第12話 我が母の教え給いし歌
「お父さんねー、もうお家出ていっちゃったの。寂しいわねー?カルマー」
母は僕に朝ご飯を食べさせながらそんなことを言った。でも僕としては寂しいとかそういう感情はあんまりないかな。ここ数日間は家にいたが、父がいない家の方が日常が僕にとっての日常になっていた。父は家にいてもピアノを弾いてるか、母と話しているか、ダラダラしているかで僕に構おうともしなかったし……。
この世界は男は家事したり子育てしないのが普通なんだろうな。僕の前世の家も似たようなものだったし、違和感はない。ただ、僕としてはそんな父に懐けるかと言われるとノーだ。
「お父さん楽団の人たちと今日から練習なんだって」
あの作ってた曲か。僕も生のオーケストラで聴けたりするのかなあ、楽しみだなあ。
「カルマ様も大きくなったら、お父様の楽団にお入りに?」
乳母のマリアが言った。え、それって確定してることなの?自分で将来選んじゃダメ的な?あれかな、「父さんが医者なんだからお前の将来も医者に決まっている!一日12時間以上勉強しろ!」っていうタイプの毒親、いや、毒乳母だったりする?もしかして。僕としては魔法のこともあるし、どうせ楽団には入るつもりしていたけど、父の七光りって思われるのは勘弁だよなあ。実力で楽団の試験に受かりたい。
「そんなのわかんないわよー、あの人はそのつもりだけどね?この子にはまったく別の才能があるかもしれないし……。ゆっくり見守るわー」
「そうですか、ルイーズ様らしいですね」
ほ、よかった。この母なら僕の意志を尊重してくれるだろう。
「○○はお母さんのこと好きよね?ピアノ弾いてくれるわよね……」
刹那、僕に嫌な記憶がよみがえってきた。母さん……。
「あら、カルマ?ってええええええええ」
「ルイーズ様、お手を洗ってください!ここは片づけますので!」
「それよりカルマの体調!!熱は!?ほかに悪いところない!?」
ごはんを吐き出してしまった……。
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