第15話:家族の守りと闇資金

「グレタ、今直ぐ家を引き払って家族全員で屋敷に住み込んでください。

 それと、これとこれを常に身につけておいて。

 家族の分もあるから、全員に渡して必ず身につけさせて。

 駄目よ、これは命令よ、グレタから私の秘密が漏れたの!

 魔法使いによる魅了自白術だそうよ。

 ああ、大丈夫、味方に雇ったから、そうよ、アルフレッドよ。

 でも今回はついていただけ、次は完全な敵かもしれないわ。

 グレタを人質に取られたら、私は抵抗もできずに殺されるわ。

 だから家族で屋敷に籠って欲しいの、分かってくれる、ありがとう」


 アルフレッドが全てを教えてくれました。

 自分が不完全な人間だというのは重々承知していました。

 承知はしていましたが、それでも面と向かって人に言われるとショックでした。


 特に大切なグレタとグレタの家族を危険に晒していたと知って、完全に方針転換するほど考え方が変わりました。


 御姉様を蘇生させるのを遅れさせてでも、グレタとグレタの家族を守ります。

 素材集めはアルフレッドに任せればいい。

 アルフレッドは自分の事情を話してくれましたから、信じる事にしました。


 それに、殺す気だったら、既にグレタも私も殺されています。

 だからこそ、信じるなら徹底的に信じるべきだと思えたのです。


「マーヘンドラ、屋敷の護りはどうなっているの?」


「元々の家臣の方々には、訓練のやり直しをしてもらっています。

 モンタギュー公爵に仕えている護衛役の方々は、腕はまあまあですが、侯爵閣下の命令で、守りを疎かにして突っ込む弱点があります。

 エンマ様の個人的な護衛の方々も、個々の腕はいいのですが、連携が全くできていません、まるで何者かに操られているかのようです」


 新たに屋敷全体の防衛を任せた、冒険者パーティー「鉄壁の護り」のリーダー、マーヘンドラが私をチラリと見ます、分かっていますよというサインでしょう。


 エンマやその手先は、マーヘンドラが見抜いたように、魔法で操っているので、当然の指摘です。


 アルフレッドが推薦した冒険者パーティーだけの事はあります。

 ですがアルフレッドの言う事を鵜呑みにした訳ではありません。

 冒険者組合での評判も過去の実績も確認しました。


 冒険者ギルドの強い推薦を理由にして、アンドレアの許可もとりました。

 基本臆病なアンドレアが、屋敷の警備を任せてもいいというくらい、突出した戦績と評価を得ている冒険者です。


「それは兵数を増やせと言う事ですか?

 ならマーヘンドラがこれと思う冒険者を推薦してください。

 父上と私の両方が気に入らなければ無理ですが、新たに召し抱えるか、臨時で護衛役に雇いましょう」


 さて、問題は資金ですね、アンドレアはあれでケチですからね。

 私には貴族家の収支など全く分かりません。

 御姉様から多少聞いてはいましたが、縁のないモノだと思っていました。


 地下牢から逃げ出した後は、冒険者として狩りで暮らして行く心算でしたから。

 御姉様の蘇生に時間がかかるのなら、自分で狩りをして資金を稼いだ方がいいでしょうか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る