もう一人の冒険家
第32話 襲撃
「空も海も見えてるのに。ここが地下なわけないじゃん……」
笑い飛ばそうと思ったけど、できなかった。ティランノスの表情から嘘を言っているようには見えなかったから。
「パゲアは人類では辿り着けない程、地下にある。数年に一度、地上の島と空間が繋がるんだ。パゲアの土地自体が動いてるわけじゃない。
説明が難しいけど……今のパゲアは切り取られて地上に張り付けられてる状態なんだ。今は地上の島国のフリをしているが実際は違う。今見えてる空はパゲアにとっては天井で、島周辺の海は地下水なんだ」
私は考え込んだ。パゲアが地下にあるのだとしたら色んな事に説明がつく。電波が悪くなるのも、島に住むというのに肌が白いのも。パゲアの人達が私のことを「地上の者」と言っていたのも全部、パゲアが地下に存在するからこそだ。
「でも、どうしてティランノス達……パゲアは地下に?」
「それが彼らに
ティランノスの声ではない、大人の男性の声が聞こえて私は心臓が飛び上がった。ティランノスもベール越しに目を丸くさせているのが分かる。
この声はよく知ってる。でもどうしてここに?理解できないことが立て続けに起こって、私は急速に口の中が
「エドガー……さん」
「久しぶりだね。ライリー。また少し背が伸びたかな?」
そう言って穏やかな口調で姿を現したのはエドガーさんだった。見た目はいつものエドガーさんなのに、近づきがたい雰囲気が漂っている。
「何故ここに地上の者がいる?パゲアには選ばれし者しか立ち入ることができない!」
ティランノスが声を上げた。そうだ。私以外にパゲアに辿り着いた船は無い。
「私もその選ばれし者だからだよ」
そう言って首元から出したのは私のものと同じ、黒い球状の石がついたネックレスだった。
「それは……!」
ティランノスの口が開いたまま塞がらない。
「それは……父さんがオズウェルに渡したネックレス!」
「お父さんに渡したって……どういうこと?私が持ってるもの以外にもあったの?」
私の問いかけにティランノスは話しにくそうに続けた。
「ああ……。オズウェルの別れ際、そのネックレスを父さんが手渡してるのを見た。2つ分、今度娘と来るときに持って来るといいって……。必ずパゲアに導くだろうって言ってたんだ」
「私と……お父さんの分?船には私の分しかなかった。じゃあ、どうして。どうしてエドガーさんが持ってるの」
自分で疑問を口にして、震えあがった。だって、お父さんが持っていなくてエドガーさんが持っているということは……。
「オズウェルから奪ったんだよ」
「お父さんは……。お父さんはどうしたの?」
聞いてはいけない質問をする。恐ろしい答えが返ってくると分かっていても私は聞かずにいられなかった。
「オズウェルと私は分かり合えなかった……。だから死んだんだ。」
エドガーさんの落ち着いた声を聞いて、目の前が洞窟の中より真っ暗になる。気が付くと私はその場に膝をついていた。
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