第8話 冒険仲間との出会い(2)

「いやあ!すごい魚の大群たいぐんだ。あんなの見たことない!」

 穏やかな声が聞こえてきて驚いてそちらの方角を見ると、少し先の方に助けを求めていた小型船が止まっていた。

 船のあるじはひょろりとした眼鏡をかけた男の人だ。

 海賊にもパゲア島を狙う企業の人にも見えない。だとしたら……。

「冒険家?」

「そうだよ」

 髭面でぼさぼさ頭だったけれどその目は少年のように輝いていた。子供のような眼をした大人……お父さんを思い出す。

「仕事を辞めて、つい最近冒険家になったばかりなんだ」

 私は男の人の言葉に目を丸くする。自分と同じように冒険家になりたての人がいるんだ!孤独な海に突然現れた同じ冒険家に私は嬉しくなった。

「それよりその船ってあの偉大なる冒険家、オズウェルのだろう?どうして君が?」

「それは……私がオズウェルの娘、ライリーだからです!」

 男の人は目をいっぱいに開いて面白いぐらい驚いてくれた。私は誇らしげに胸を張る。

「ということは……」

「私も冒険家で、今パゲア島に向かっているところなんです!」

 男の人は口元に手を当てて分かりやすいぐらいに感動してくれた。

「まさかこんな所で出会うなんて……!これも何かの縁だろう。助けてくれたお礼も兼ねて、さっき釣り上げた魚でも食べないかい?」

「はい!」

 私は元気よく返事をした。

 船を横に並べ、私は男の人が焼いてくれた串に刺した魚を思いっきりかぶりつく。お互いの船のデッキに立ちながら話をすることになった。

 魚の油が口いっぱいに広がって、今まで食べたどの魚よりも美味しく感じる。

「実は僕、つい最近まで会社員だったんだ。ああ、僕の名前はユジ。スペアタウンに奥さんと子供がいるんだ」

「私はライリーと言います!」

 私はユジさんとお互いの船越しに握手を交わす。ビルの中でディスプレイを眺めていた人が冒険なんて。驚いた。

「家族から猛反対されなかったんですか?」

 何気なにげなく聞いてみる。私の船出はなかば強引に決行されたものだからユジさんの船出がどんなものか気になったのだ。

「されたよ!でも最終的には応援してくれた。人生一度きり。そんなに言うなら言って来いって。地元の仲間も集まってさ……盛大に送り出してもらったよ」

「……ふうん」

 モヤモヤした気持ちになりながら焼き魚を口にする。その感情が何だか分からないまま嚙み砕いて飲み込む。

「ずっと子供のころから憧れてたんだ、オズウェルに。こうして夢をかなえることができて嬉しいんだ!まあ、魚釣りをしていたら海鳥に囲まれてピンチになってたけどね!」

 そう言って楽しそうに笑った。

「私も……」

 少し言い淀んだけれど、はっきりと言葉にする。

「私も。ユジさんと同じ。やっと夢を叶えられましたよ」

 明るい言葉を言ってしまえば、自然とモヤモヤ感は後ろに隠れてくれる。

 


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