第5話

学校は少しの間休みになっている。


 目が覚めると、横に優は・・・お兄ちゃんは居ない。


凄く、そのことが寂しく怖く感じる。


 

 部屋から出るのが怖い。祖父と祖母に会うのが怖い。


 「あ、ちょうど目が覚めたみたいだね。」


「優・・・お兄ちゃん?」


「朝ごはん持って来たよ」


ーーーーーーーー


 「美味しい」


「良かった。」


「優・・・お兄ちゃん」


「別に優でもいいよ。」


「・・・いや、これからはお兄ちゃんって呼ぶよ」


「分かった。」


 それから無言が続く。


 「俺さ、今日からまたバイトだから」


「えっ?」


「この曜日はいつもバイトなんだよ」


「・・・そうなんだ」

今日はずっと一緒にいて欲しかったな。


 「それでね、甘寧さん」


さん


 「何?」


「あんまりこの部屋からは出ないで欲しい」


「そうだよね」


「うん、ごめんね。俺が説得出来なくて」


「いいの!!寧ろそれはそうだなと思うし私もあまり会いたくない。」


 「うん、そうだね。それでね」


「何?」


「つまり、その・・・」


優くんが照れて顔を赤くしてる。


 「今日からこの部屋は俺と甘寧さんの一緒に二人でクラス部屋になったの」


「・・・そうなんだ」


「あれ、嫌じゃない?」


「もうそんなことはお兄ちゃんには思わないよ。それに」


「それに?」


「私も同じ部屋が良い」


「えっ、」

 

ーーーーーーーーー


私はトイレに行く為に少し周囲を見て部屋から出る。


 閉まってる扉が声が聞こえる。



「優のお願いだからあの部屋を自由に使うことは認めてあげるけど、生活の道具とか買ってあげる気にはならないからね」


 「はい、そっちの方は俺のバイト代から出します」


どいう事?


「俺も流石に祖父と祖母にこれ以上の、頼みは言えません」


「優のことなら聞いてあげたいが」

と言ってくれる祖父


 「私も大切な娘だったし、話を聞く限り、その娘さんも同じような性格な所はあるようだから」


そうだよね。そう思われても仕方ないよね。


 「・・・出来れば二人にも甘寧さんと仲良くして欲しいとは思います。二人もその気持ちはあると思います」


「・・・」


「・・・」


「だから、今は二人の怒りが収まるように時間をかけて、甘寧さんのことを少しだけ遠くで見守って、いつか助けてあげてください」

 

 お兄ちゃん、


「それで良いな」


「優こそ、恨んでないの?たくさん虐められてんでしょ」


「・・・俺も当時のことを恨んでない訳ではないです」


・・・そうだよね。当たり前だよね。痛かったよね。辛かったよね。


 「けど、ずっと憧れてた兄になれから、お母さんはずっと俺が妹欲しいってことに悩んでくれていました。それが俺を虐めた人でも、大切な母の俺への贈り物だと思ってます」

 

・・・お兄ちゃん・・・お母さん。


「そっか、その贈り物を形見を大切にしたいんだな」


「はい!」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る