5.スーパー銭湯
「ごはん、おいしかったね」
「うん、はまぐりおいしかった―!」
「金のはまぐり、見つけられなかった……」
「そもそもさ、山ちゃん、途中で貝採るのやめたじゃん」
「仕方ないじゃん、疲れたんだもん。……スーパー銭湯、ついたよ」
「早くお湯につかりたいなあ。全身べとべとしている気がする」
「じゃあ、出たら、この辺で待ち合わせしよう。ここ、畳でくつろげるし、何か食べたり飲んだりも出来るし。……あっ、漫画もある!」
「いいよ、じゃ、ここで待ち合わせ」
「時間はどのくらい? 三十分とか?」
「は? むりむり! 何言っちゃんの」
「え? 一時間とか?」
「うーん、それでぎりぎりかなあ。お化粧もしなくちゃいけないし」
「お風呂出て、お化粧するの?」
「だって、うちじゃないし」
「いいじゃん、お化粧しなくても」
「あたしは嫌なの。じゃあ、頑張って一時間で出てくるよ。……もうちょっと長いかも。髪を乾かさなくちゃいけないし」
「いいじゃん、濡れたままでも」
「やだよ、恥ずかしいよ」
「じゃあ、一時間後で」
「うん、やっぱ九十分後で!」
「え?」
「えへへ。じゃあねっ」
「う、うん。あとで」
「山ちゃん、山ちゃん、起きて」
「ん~」
「ごめんね、お待たせしちゃった」
「うん、だいじょうぶ」
「何か飲む?」
「たんさん……」
「コーラでいい? あたしはアイスコーヒーにしようかな。買ってくるから、待ってて」
「うん」
「お待たせー」
「ありがと、あず」
「うん。待たせてごめんね。……ねえ、ところで、あそこの机のグループ、見てみて」
「うん、見た」
「男二人に女一人じゃない?」
「うん、そうだね」
「どういう関係だと思う?」
「友だちじゃない?」
「えー、山ちゃんさ、あたしが男友だちといっしょにスーパー銭湯行ってもいいの?」
「それはダメ。……きっと、彼氏いないんだよ」
「三角関係とか!」
「えー。……でも楽しそうだよ?」
「じゃあ、実は男同士がカップルで、女の子はどっちかの元カノとか」
「何言ってんの。……実は仕事なんだよ」
「どんな?」
「スーパー銭湯市場調査! 抜き打ちで、どんな営業をしているか、チェックしているんだよ」
「なるほど!」
「このスーパー銭湯は漫画が少ないよ。WiFiで遊べるスペースも、もっと欲しい。あと、クッションが欲しいなあ」
「それ全部、山ちゃんの希望じゃん」
「うん、でも、おれ、スーパー銭湯市場調査の仕事、したいな。うまくやる自信ある!」
「山ちゃん、スーパー銭湯、好きだもんねえ」
「うん、温泉すき」
「あ! 旅行、いこうって話してたの、覚えてる? 車で」
「うん、覚えてるよ」
「温泉に行こうよ」
「いいねえ」
「でしょ?」
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