書記になれ
エジプト新王国時代に『ドゥワケティの教訓』という学習教材があり、書記になりたいものはこれを学んで字を習得し、役人になりました。文字を習得する単調で根気のいる学習にうんざりして投げ出す者も多かったそうです。
成り上がるには、書記になる他に、軍人、神官などの道があったそうです。
書記に関して少し引用します。
《書記職の讃美》
王室の書記官であり、かつ神々の王、アメン=ラーの畜牛の監督、ネブ=マアト=ラー=ネケトが書記官ウェン=エム=ディイ=アメンに向って述べます。
―― 中略 ――
(すぐれた役人となるべく)書くことを愛し、歓楽を厭いなさい。人目を避けるようなところに心を遊ばせてはなりません。ブーメランや毬を投げることはやめたほうがよいのです。ひねもす指で書き暮らし、夜は夜で読書をするのです。友だちと同じようにパピルスの巻紙と筆具をたずさえるのです。それはシェデフ酒よりも快いものです。書くことはと言えば、それは、その道を心得ている者にとっては、ほかのいかなる職よりも利益あるものなのです。それはパンやビールよりも、また着物や膏薬よりも快いものです。それはエジプトにおける世襲財産よりも、また「西方の国」の墓よりも高価なものなのです。
《書記の職はほかのどんな職にも優るものである》
書記になるがよい。それはおまえを労役から救い、あらゆる種の仕事から守ってくれるものだ。スキやツルハシをかつがなくともすむ。カゴを運ばなくともよい。多くの主人や数多い雇い主の下にいなくてもすむから、いろいろな苦悩からも救ってくれるというわけだ。
―― 中略 ――
パン屋は規則正しくパンを焼き、首はカマドのなかにつっこみ、足は息子にしっかりおさえられた姿勢でパンを火にかけるのだ。息子の手から足がすべったあかつきには、彼はカマドの底に落ちこんでしまう。しかし書記はといえば、それはこの世のあらゆる職種の先端をゆくものなのだ。
エジプトの象形文字を勉強するのは大変だったでしょうね。しかし、現代みたいに娯楽小説は多くなさそうだから、それほど楽しめない気がします。
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