第56夜

11月。

25年前、ウチは親になった。

17歳。

妊娠してるのは、なんとなく気付いていた。


実母はヒステリックになってたな。


高校に行かせるんじゃなかった!って怒り狂ってたのは、覚えてる。

(相手が同じ高校だったので)


子供が子供を産んで とか

産んだら親になるんだから とか


小さい頃から

お姉ちゃんだから我慢しなさい

迷惑をかけるな

甘えるな

自分でやりなさい

と言われたので、甘え方も頼り方も解らず。

そのまま子を持つ母になったので、自分でやらなくてはイケナイと思い込んだ。


相手からの暴力も暴言も、

相手を選んだのは自分

産む事を決めたのも自分

「だから私が悪い」と思った。


私が未熟だから・子供だから・生まれなければ良かった子だから・親不孝者だから。


今も、根底にはそれがあって。

子供達の事で出来てないことがあると、ソレが首を擡げる。

昏い暗い場所から、這い出てくるよう。


『お前が育てたら全員不登校になってダメになる』

と言われた事がある。

〘 母親失格〙だと。

離婚間際の話だけれど。

相手は『どうせ俺は独りだから』と言ったし、『養育費は手渡しでしか払わない』とごねた。

離婚してからの言動が意味不明すぎて、一切の連絡を絶った。


大好きで大事な人と、知り合って1年になる。

彼は覚えてないかもしれないけれど。

母親としてもダメな自分

人としてもダメな自分

知り合った当時は、本当に毎日[終わらせたい]と思っていた。

末っ子が20歳になったら、[終わらせよう]と決めていた。

何故、私はこんなにダメな人間なのだろうと。

初めて、人に自分の思うことを話したのが彼だった。

ネタや笑い話としてではなく、きちんと話したのは彼だけで。

今でも、何故彼が聞いてくれたのか疑問だったりする。

人嫌いなのは、周りからも本人からも聞いていたから。


あの時聞いてくれたから、ウチは興味もったんだろうな。

ウチはすぐクヨクヨと悩む。

気をつけていないと、あっという間にマイナス思考に飲まれてしまう。今日みたいに。


それでも。

彼を大好きで大事に想う事が、救いになってる。

「おつかれさま」とか「おかえり」とかが嬉しいし、電話がくると幸せで。


生きていたいな、と思う。

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