第8話

「嵩雅」

同じ結果しか出ない占いゲームに飽きた頃、例の姉弟の【弟】の名前が突如判明した。


それまでノイズに掻き消されていたのに。


嵩雅(たかまさ)、と呼ばれている【弟】くん。

どうやら歯に衣着せぬ物言いで、周りに煙たがられているようだ。

桜が心配していた。


…私からしたら、羨ましいのだが。


無駄な気を遣わず、きちんと意見できるのは強いと思う。

謙虚・謙遜、何にもいい事ない。

そんな耳障りの善い言葉で、実際は自分を貶めているのでは?と嵩雅くんの言動で気が付いた。

気を遣うのは良いことかもしれないけれど、大事にしたい相手以外に気を遣うのは神経がすり減る。

嵩雅くん(くん呼びでいいのか?)の表情筋が賑やかでないのは、ある意味自己防衛なのかも?

<…私はスグ顔に出るからな。>

と、自分の頬をつまみながら、盛大なため息をついた。

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