第21話 病気の娘のために村の作物を盗んでいた農民と、言いがかりばかりのムカつく奴

洞窟から出て来た俺たちを、バルバトスたちは出迎えた。


「ジェイド~!」


ルリが泣きながら俺の方に駆け寄って来る。


「ああ!」


俺は思わず、ルリを抱き締めてしまった。


「うん!」


涙目のルリ。

可愛いな。


「ジェイド、ありがとう!」

「え? 何が?」

「戻って来てくれて、凄く嬉しかった!」

「そうか。よかったな」


俺は微笑んだ。


「あのね、ジェイド。私、謝りたくって……」

「何を?」

「私、ジェイドがツネナリに酷いことをされて虐められてるって思って……ごめんなさい!」

「あ、ああ。まあ、いいよ。大丈夫上手くやってる」


俺はツネナリの嫉妬の視線を感じた。

どうやら、俺のことを羨んでいる様だ。


「ところでその男は誰だ?」


バルバトスがファクトを見た。


「こいつはファクトという村人です」

「そうか」

「こいつの処分は任せてもいいですか?」

「わかった。こちらに任せろ」


バルバトスはファクトの顔を見た。


「お前、どこかで見たことがあると思ったら、あの時の……」


ファクトは震えていた。


「覚えてたか! そうだ! 俺だよ! !」

「なぜ、俺たちを止めたのか、本当のことを話してもらおうか」


バルバトスは剣を構えた。


「王族のせいだ。俺が貧しいのは。ささやかな復讐だよ」


ファクトは淡々と話した。


「そうか」

「俺たちはいくら働いても豊かにならない。王族が税金として沢山持っていくからだ。だから俺は、村の作物をゴブリンを使って盗んだ」


ゴブリンと手を組んでいた。

人間にもそんな奴がいるのか……



「ファクト。お主はなんてことを……」


村長が頭を抱えている。

村長の家にみんな集まった。


「村長。俺は自分の生活を守るためにやっていたんだ。病気の娘のために金が必要だったんだ」


盗んだ作物や家畜は、商人に売り飛ばしていたらしい。

ファクトの娘は彼の腕の中で寝息を立てている。


「お主はこのままでは、この村にいられないだろう」

「ああ。わかっている」


ファクトは観念したようだ。

バルバトスは何も言わなかった。

村のことは村の者に任せるつもりなのだろう。


「このまま娘を連れて出ていけ」


ファクトは無言で立ち上がった。

踵を返し、去って行く。


「これで一件落着かな」


俺は呟いた。


「うん! そうだといいな」


ルリが悲しそうに言う。


「だけど、俺はあいつが許せねぇ」


ツネナリが拳を握った。


「ツネナリ、我慢しろ」


バルバトスは、村の決めたことに口出しはしないつもりの様だ。


「違う。俺が許せねぇのはジェイド、お前だ」

「は?」


なんで俺?


「お前、俺が襲われてた時、じっと見てただけじゃねぇか!」


ツネナリは俺に詰め寄った。


「ツネナリ落ち着け」

「落ち着いてられっかよ!」


ツネナリは今にも殴りかかってきそうな勢いだ。


「何だよ!助けたじゃねぇかよ!」


俺は反論する。


「もっと早く助けろよ、じゃあ。お前、本当は俺が殺されるのを待ってたんだろ?」

「待ってねえわ! バカかお前!」

「バカとはなんだ、馬鹿野郎!!」


ツネナリは激昂して、俺の胸ぐらを掴んだ。

俺は必死に抵抗する。

バルバトスが間に入って来た。


「おい!二人ともやめろ!どっちが本当のことを言ってるんだ?話しは俺が聞く」

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