第11話 その頃、主人公が元いたギルドではとんでもないことが起きていた!

その頃、ジェイドが元いたギルド『月光隊』ではーー


「まったく、いい厄介払いが出来たぜ」


と、ギルドマスターのギリトは言った。


「ああ、ジェイドがいなくなってから楽になった」


と、副ギルドマスターのバジウスは答えた。

二人はジェイドのことをどうとも思っていないようだった。


「財政が苦しかったから一人分の給料が減らせて良かったわ」


会計係のアシュリーが笑う。


「ま、これでギルドは安泰だ」


ギリトも笑った。

『月光隊』のメンバーたちは、ジェイドがいなくなったことを喜んでいた。


「あいつは本当に役立たずだった。よく分からんスキルで、俺たちにアピールしてきたが、なんのことはない、あいつの嘘だった」


バジウスは笑った。


「確かに。バベルの塔でのクエストでは、あいつのヘマで全滅しそうになった」


ギリトが言う。


「そのあとの、俺のフォローでどうにかなったろ。ギリト」

「そうだったな。あの時は、お前の機転で助かったぜ」


バジウスはまた笑った。

背が小さく、あまりカッコ良くない顔だ。

職業は魔導士。

悪知恵に長けている。

実はジェイドはこのギルドでは結構活躍していた。

だが、バジウスがこっそり手柄を盗んだり、ギリトに対して、ジェイドがヘマをしたと嘘の報告を上げていたのだ。


「月光隊はこれで、新しいメンバーを雇う金が出来た。今度こそ有能な奴を雇って、大きなクエストをこなしてえな」

「だな。まずは冒険者を集めないとな」

「ああ」

「それに、優秀な戦士も必要だろう」

「そうだな」

「そして、アーチャー、盗賊も欲しい」

「欲張りすぎじゃねえのか」

「そうか?」


月光隊は小規模のギルドだ。

メンバーは5人ほど。

ギリト、バジウスは、ギルドを大きくして、やがて成り上がろうとしていた。


「しかし、何をするにしても金が要る」


ギリトはポツリと言う。


「ギリト!」


突然、部屋に響く甲高い声。


「あ? メリッサか」


メリッサが入ってきた。

彼女とギリトは異母兄妹だ。


「ギリト! ジェイドを追放したって本当!?」

「なんだ、聞いてたのか?」

「ひどい! いくらなんでもひどすぎる! 私にも相談してくれればよかったのに!」


彼女は、メリッサ・ナタリア。

職業は僧侶。

回復魔法を得意とする。

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