銃があります!~魔法なんてなくても!~

ミリオタ陰キャ

第1話 ~はじまり~

 やはり銃は美しい。殺されるなら銃で撃たれて死にたい。と、思って生きてきた。でも、本当に死ぬのはさすがにダメだろ……。

 俺が街を歩いていたら暴力団の銃撃戦に巻き込まれた。赤星だったな。うん。

 

 


 それにしても、死後の世界というのは恐ろしいものではないようだ。 

 

 眠っているような、ゆったりとした温かい感じ。

「これなら死ぬのも悪くねぇや。」

 ボソッとつぶやいた。




「何をおっしゃっているのですか。早く起きてください。」

「はいはい……。」

 うむ。そろそろ起きるか……。

「って誰!!!!!」

「私ですよ!アルです!」

「だから誰!!!!」

 いや、落ち着け俺。知らない家だ。最後の記憶は、暴力団の赤星。

 暴力団の家だな。俺は拉致された。

 もしここで俺が変な行動をしたとしよう。殺されるかもしれない。ここは、平穏を装うことにしよう…。

「冗談だよ。おはよう。アル。」

 フッと笑って、その場を切り抜けた。


 って、ここはどこ?文明的なものはどこにもない。どうやら、異世界のような……。

 

 どうやら異世界のようだ。

 

 いや、意味が分からない……。

 

 そもそも何故俺なんだ……。

 

 魔法とか、スキルとか、ステータスとか、そういうのがあるのだろうか。

「ステータスオープン!!」

 いや、なんでもない。


 "俺はそういうやつは嫌いだ"


 俺も現世ではweb漫画を読み漁る時期があった。だが、ほとんどが同じようなタイトルの同じような内容の漫画。タイトルだけで2行消費するとかおかしいだろ。まぁ、いつのまにか俺は、魔法とか転生とかの過剰摂取でアレルギーが出るようになっていたのだ。

 だが、転生してしまったものは仕方がない。諦めてこの世界に順応していくしかないのだろう。

 まず、俺はアルという黒髪のかわいらしい少女と2人暮らしのようだ。まぁ、彼女の顔は91点。

 自分が転生者だとバレると面倒になりそうだから、黙っておくことにした。

「あのさ、ここは?」

 とりあえず聞いてみよう。

「家。」

 アルが簡潔に答える。

「それより、今日は検査でしょ!スキル見に行くよ!はやく!」

 どうやら、この世界では検査なるものがあるようだ。気持ち悪いぐらいに俺が昔読んでいたweb漫画に似ている。

 家を出て、大通りを40分ほど歩く。空にも届きそうなドームの宮殿が見えた。

「おぉ……。」

 長い行列の後ろへ並ぶ。美しい庭を通り中へ入る。恐ろしいほど大きな宮殿だ。いかにもといった煌びやか内装。ベルサイユ宮殿のような。というかこれがベルサイユ宮殿なのかもしれない。いや、行ったことはないのだが。

 現世のコロナワクチンの集団接種会場のように、簡単に区切られた部屋がたくさんあり、たくさんの人が並んでいる。俺も並んだ。前にいる人は剣を持っているから、騎士にでもなるのだろうか。

 やばい。緊張してきた。

 いや、アルさんも言ってた。"緊張するな"って。だから大丈夫。

 どうやら、冷たくて固い特大ビーダマのようなものに触るだけでよいようだ。

「んじゃぁ。その球に触れてくれ。」

 賢者とか、大魔法使いというような言葉が似合う老人に言われた。

「は、はい。」

「おぉ……これは……。」

 この反応は何なんだ?なんかやらかしたか?

「君……。来てくれ……。」

「は、はぁ……。」

 裏に呼ばれた。いや、いじめじゃなくて。なんだか、いかにも偉そうな人がいる。杖をついているおじいさんだ。

「お主は……。魔法が使えん。魔力がない。」

「はぁ……。」

 どうやらよく転生ものにあるチートパワーはないようだ……。俺TUEEEEEEEができないのか...

「じゃが、君のスキルは珍しいものだ。」

「へ?」

「お主のスキルは、"召喚"じゃ……。」

「はぁ……。」

「召喚スキル強力だ。自分の思い描いたものを召喚することができる。」

 いや、絶対強いやん……?。

「だが、魔法関連の道具は出せない。剣や斧のような物理攻撃は魔物に効かないだろう?つまり……。」

 え?ってことは、剣士が不遇職なタイプの異世界???聞いたことないぞそんなの……。てか、さっき剣士っぽい人いたぞ。普通に。

「まぁ、そのスキルを活かして日用品を召喚するなどすれば、まぁまぁいい職に就くことができるだろう。」

 高級品を量産……。儲け放題じゃないか!?

「このスキルって、どれぐらいレアなんですか?」

「1000年に1人ぐらいじゃろうな。前に記録された召喚スキルの保有者は約1200年前じゃ。」

 Oh……。ラッキーなのか?まぁ、お金には困らないと思うが……。




 結論から言おう。あの後、召喚スキルを使いながら生活して分かったことがある。

 召喚スキルはすごく便利だ。自分が思い浮かべたものや念じたものが実際に出てくる。

 だが、大きなものは召喚できないようだ。机を召喚しようと試みたが、出来なかった。それに、召喚は疲れる。

 だが、俺はさっきアルにいいことを聞いた。どうやら、スキルというのは魔物を倒したらレベルが上がるそうなのだ。

 つまり、俺が魔物を倒すことができれば俺の召喚スキルのレベルが上がって、たくさんの物、大きな物を召喚出来るようになる!


 そうと決まればやることはただ一つ。冒険だ!

 だが、問題は武器だ。AKS-74Uというアサルトライフルが欲しい。理由は好きな銃だから。だが、魔物相手には威力不足だろう。5.45mmだし。というか、魔物ってどんなものなのか見たこともない。"ゴブリン"だとか、"スライム"みたいに聞いたことあるものばかりだが実物はどのようなものなのだろう。

 対物ライフルとかになれば、魔物相手に効くかもしれないが、俺のレベルじゃそんな大きなもの出せるかわからない。

 それに、適性検査で言われた"魔物相手に物理攻撃は効かない"という言葉も気になる。アルに聞いてみると、

「効かないというよりかは、そんな距離まで近づいている時点で相手の魔法で死んじゃう。」とのことだった。

 つまり、敵の魔法の射程外から攻撃できる銃は想定外ということだろう。じゃあ弓はどうなんだ?気になることばかりだが、それは一度置いておいて、とりあえず銃を召喚しよう。

 俺が選んだのは……。

 "RPK"という銃だ。AKMという銃をマシンガンとして使えるように改良が施されたもので、最高にかっこいい。

 

 集中。ゆっくりとRPKを思い浮かべる。


「うぉ。」

 

 RPKだ。独特なバイポッド、長いバレル。RPKだ!

 嬉しい。嬉しい!嬉しい嬉しい!!!

 RPKだ!AKだ! 

 これ、魔物を倒してレベルを上げれば戦車とかも出せるのだろうか……。

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