第14話 日昇権利奪還戦⑤
「なんだこれ・・・。どういうことだよ?」
「もう私の事は終わった前提で話してるんだ。本当に人の事を舐めてる。」
その距離数十センチ。
四人誰でも一歩で攻撃できる距離だった。
最初に動いたのは
あの時仕留め損ねた後悔を拳に乗せ、顔面に向かって放つ。
しかし湊の拳は当たらなかった。
いや確実に当たったハズなのに、まるでホログラムの映像に手を伸ばした後のようにすり抜けたのだ。
「何で⁉絶対に当たったじゃん!」
「もう私には触れられない。今の私は万物との接触を許さない。核爆弾だろうと今の私は殺せない。更に・・・。」
言葉の途中で実千佳の姿が四人の前から消えた。
「私は透明になれる。もう肉眼で捉えるのは不可能。」
実千佳が消えた教室から彼女の声が聞こえた。
どうやら四人が認識できないだけでこの教室にいるらしい。
無数の走る音が聞こえた。廊下からだった。四人が目を移すと廊下に化物の大群が現れた。
その数は、二階の端から端までを埋めれる程だった。
それだけではない。
同時に化物が教室に補充された。さっき倒した数と同じ五十程だった。
「二階だけじゃない。他の階にも同じ数化物を配置した。もう出し惜しみはしない。学校中の化物を全員倒して、透明状態の私を見つけて殺したら貴方達の勝ちで良いよ。雲もついでに払ってあげる。あ、因みに化物は倒した分だけ補充していくから。出せる数に底とか無いからいくらでも付き合うよ。必ず殺す。」
誰も手をかけていないのに扉が勝手に開いた。
「追ってきなよ。貴方達の言動を全部見ながら待ってるよ。」
その声で透明化を使った実千佳が外に出たのだと理解した。
「何それ・・どういうこと?」
湊が呟く。その言葉には理解不能やら絶望やら色んな感情が込めらていた。
「無理じゃねーか。そんなの・・・。透明なのをどうやって探せば良いんだ。しかも見つけられたとしても倒せねーじゃん。全部の攻撃すり抜けるんだろ?」
「そもそも追っかけたり、一々丁寧に探すなんて無理だよ。規格外の数の化物で手一杯なのに。しかも化物を倒すのもただじゃない。いつか私達に体力の限界が来る。」
校庭には雪が積もる様に化物が積もって行く。増え方も尋常では無く、数十秒後には化物の山が二階と同じ高さになりそうだった。
そんな中、
「必ず殺す・・・・か。」
翔の手から十字架の剣が消えた。
「じゃあなんで最初からそれをやらなかった。」
翔の独り言は続く。
「殺す事が目的ならいつだってできたはずだ。俺達は最初二人ずつで行動してて戦力も分散してた。おまけに一人で行動してる時もあった。ハレさんから戦える力も貰ってない。なんでやらなかった?無限に化物生み出せるなら簡単だっただろ。透明化できる?その力があれば俺達が教室に行く作戦は破綻してたんだよ。ずっと姿を隠して出て来なければ良かった。何で俺達の前に姿を現した?」
「これだけの力だぜ?きっと何か使う時の代償があるんじゃねーか?」
「それは無い。校庭を見て。無尽蔵に化物が召喚され続けてる。底があるなら止めれば良い。あったとしても、あの程度では底尽きない力があるって事だ。透明化もすり抜ける力も本当。本人が能力解かなきゃ多分一生そのままだと思う。」
「私もそう思う。彼女は嘘つける人間じゃないから。」
彼女の事が書かれた本を読んだ
「じゃあ引島君。つまり斎藤さんは私達を殺す事が目的じゃないって事?」
「そう。彼女は見たかったんだと思う。俺達がどうするのか・・・。」
化物が翔に飛び掛かる。まるで言葉を遮るように。即座に十字架の剣を手に持ち、切りつける。
切った部分が黒く変色して化物は粉々になって消えた。
翔の剣は出し入れ自由だ。使いたい時に現れ、しまいたい時に消える。
「とにかく彼女に会って話したい!真奈美さん!彼女が行きそうな場所わからない?」
「わかるかもしれないけど、言えないよ。彼女はこの会話を聞いてる。場所を言ったら逃げられるだけだよ。」
「そんな事は無い。彼女は待っててくれるよ。」
翔は真奈美から天井に写した。
そして誰かに語り掛ける様に話し始めた。
「多分聞こえてると思うから大声は出さない。聞きづらかったら言って欲しい。俺は引きこもりだ。」
夏樹と湊が驚く反応をする。
そんな反応も気にせず翔は続ける。
「学校の人間と合わなくなって、自分の居場所がなくなって、部屋に閉じこもるようになった。」
十字架の剣を強く握り襲い来る化物を断ち切る。
戦いには集中してなかった。どういう言葉なら聞いてもらえるか。
翔の中にはそれしか無かった。
「そんな俺だから君に伝えたい言葉がある。お願いだ!会って話がしたい!」
「屋上。」
真奈美が呟いた。
翔の考えはわからない。
この会話も聞かれてる。
つまりこれから行く場所を実千佳に報告してる様な物。
普通なら逃げられる。
それでもあえて非合理な行動をやったのは翔を信じていたから。
「彼女の本に書かれた情報と、強化された思考能力を使って探り当てた。彼女は此処に居る。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます