俺の幼馴染は周りには塩対応だが、俺にだけデレデレ天使ちゃん!

マリウス

第1話 えっちなこと、すき?

 俺が校門を出ようとしたところで、心美ここみに後ろから声をかけられて呼び止められた。


「健太!待ってよー!」

「なんだよ。どうした?」

「一緒に帰ろうよ。」

「どうした?そんなに俺と帰りたいのか?」

「うん!」


 満面の笑みを浮かべながら、心美は俺を見つめる。

 

可愛い。めちゃくちゃ可愛い。

 

 いつも学校の様子を見ている限りでは、明らかに周りの生徒に対して塩対応。そんな子が俺にだけこうしてニコニコ話しかけてきてくれていることに少し微笑ましい気分。

 


 しかしその微笑ましい気分を台無しにするかのように周りの視線といい、発言といい。心美は気づいていないだろが、俺にはちゃんと突き刺さっている。「あんな美女の横にいる男は誰だ?別にかっこよくもないぞ。」とか「心美ちゃん、あんな奴と無理矢理、帰らされてるんだ。可哀想。」とか。



 まぁ正直なところ俺も心美と釣り合ってるなんて思ったこともない。顔面偏差値とかいう数値を無視した最強の顔をお持ちの心美と、一般的にカッコいいの分類には入れないであろう俺とでは釣り合うわけもない。



 心のない発言も小さい頃から聞いてきたので慣れたものだ。



 普段、学校では塩対応なので、周りには見せないであろう笑顔を見せる心美を見てこっちまで何故だか笑みが溢れる。



 それに気づいた心美は何か企んだような顔で俺に尋ねる。


「健太、今、笑ってたね。なんで笑ってたの?」


ここで俺が「心美の笑顔が可愛くて。」なんて言えるほど、強心臓ではない。


「いや、なんか笑っちゃった。」

「ふーん。そっか。」


少し残念そうに心美は前を向き直した。








 学校から歩いて15分くらいしたところが俺の住むマンション。


 俺は一人暮らしをしている。というのも親は海外転勤でアメリカに行ってしまって、今はマンションに住んでいる。


 しかし俺が中二の夏から海外転勤になる話を聞いて、俺はどうしても日本に残りたいとお願いをした。そして俺は親同士の仲がいい川瀬一家の住んでいるマンションと同じマンションに新しく部屋を借りて住みたいと親に頼んだ。すると親は川瀬一家もすぐ近くに住んでるなら、ということで一人暮らしの許可を得た。


 それもあって中学二年からは心美と会う機会も多くなり、高校も一緒に行ったりすることもしばしば。


 しかしここでみんなは思うだろう。なぜ俺が親と一緒にアメリカに行かなかったのかということだ。その答えはとても簡単だ。



アメリカに行きたくなかった理由、それは心美が好きだからだ。



 幼稚園に入る前から遊んでいた仲の心美。幼稚園も小学校も中学校も一緒。俺はいつの間にか心美に好意を持っていた。


 俺は最初、気づかなかった。心美に会うたびに笑顔で話しかけてくれる。けど学校にいる時は完璧な塩対応。そこのギャップにやられてしまったのだ。いわゆるギャップ萌え。俺は絶対にアメリカには行かないと誓った。それは心美に俺の好きを伝えるためである。








 俺は横に歩く心美にドキドキしながら、帰路を歩き、俺の部屋の前に到着する。


「んー。今日はやっぱりなしにしないか?俺の部屋、汚いし。」


正直恥ずかしい。好きな女の子を家にあげるのだから。

しかし心美はいつもの笑顔でいう。


「何を今更おっしゃいますか!もう健太の家の前まで来ちゃったよ?いいの?女の子を置き去りにしたままでいいの?」


そんなことを言われたら何も言い返せない。

俺は黙って家のドアを開けた。


「えへへ。健太、優しい。おじゃまします!」

「どうぞ。」


特に見られて困るものがあるわけでもないが、どこか恥ずかしい。というのも初めて心美と俺だけの空間が完成したのだ。いつもこの家に来るときは川瀬一家、ご両親も一緒にご飯を食べたりなので、この部屋に俺と心美だけは初めてなのだ。


「なんだ。綺麗じゃん、部屋。健太のことだからもっとひっ散らかしてるのかと思った。」

「俺を何だと思ってるんだよ。」

「やっぱり健太、イジると面白いね。」


そういいながら心美は部屋を散策し始めた。

学校でもその笑顔でいて欲しいものだ。




 一通りの散策を終えて、心美はソファーに座る。俺はお茶の入ったコップを渡す。そして俺も心美の横に腰を下ろす。


「てか、何で心美は俺の家に来ようとしたの?」


一番の疑問点はそこだ。

来ようと思えば、だいぶ前から来れたはず。何故今日なのか。


「んー。それはねー。」


そう言って数秒間、沈黙が続く。

そして心美は思わぬことを口にする。



「私ね、健太のことが大好きなの。」



俺は固まる。

ましてや言葉なんか出てこない。言われたことが幻か何かかを疑い、混乱していると心美は続けた。


「私ね、健太のことが好きすぎて、もうおかしくなっちゃいそうなの♡」

「はっ?」


俺は意味が分からず、固まった状態が続く。

すると心美は持っていた、コップをテーブルの上に乗せ、俺を押し倒した。


「ねぇ、健太。えっちなこと、すき?」


俺は飛びそうな理性を何とか保ちながら言い返す。


「おい。心美。いい加減にしろ。」


少し強めの口調で言い返した。すると心美は自分のしたことを反省するかのように顔を赤く染めて、謝り始める。


「ごめんなさい!健太のことが好き過ぎて、感情が抑えれなくって。ほんとごめんなさい。ほんと、ごめんなさい。」


半泣き状態の心美。俺はどうすればいいんだ?


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