第2話エルちゃんとカイくんのこと

エルちゃんとカイくん

エルちゃんとカイくんは大型犬です。

2匹とも大きいのですがカイくんはお散歩していると大きいねぇとよく言われます。

2匹ともフレンドリーですがカイくんは特に人懐こくて甘えん坊さんです。

何度目かのお世話のご依頼があった時エルちゃんはもう16歳になっていました。

歩き方はヨロヨロして横になっている事が多くなりました。

前回は元気にお散歩しましたが今回はもうお散歩は無理なのでお庭でのんびりします。

お天気がいい時は夜もエルちゃんはお庭で寝ます。お庭が大好きなのです。

カイくんはお家の中が好きなのでお家の中で寝ます。

でもお世話に伺ったその日の夜は雨が降りそうでしたのでエルちゃんをお家の中に入れて帰る事にしました。

そして次の日の朝お世話に行きました。

するとエルちゃんの姿が見えません。

何があったのかさっぱりわからないまま探しまわると、なんとリビングの隅にある大きなお花の鉢が置いてあるテーブルの下にはまり込んでいたのです。

そのテーブルは60センチぐらいの高さで、支える脚はエックス型になっていました。

テーブル脚の間にエルちゃんの前足と後ろ足が絡まるような形で入ってしまい、出られなくなってしまったのです。

そのテーブルの前にはとても大きな荷物が置いてありました。なぜこんなところに?と昨日思ったのですが理由がわかりました。

エルちゃんが入らないように置いてあったのですね。

でもその荷物をかいくぐってエルちゃんは入ってしまったのです。

すぐにお家の方にLINEで連絡して様子を写真で送ってからエルちゃんを助け出す準備をしました。

上に置いてある大きな鉢を下ろして、隣に同じ形のテーブルが置いてあるのを動かしました。

でもエルちゃんは以前より痩せたとはいえ、大型犬で私の力ではびくともしません。

何よりエルちゃんの足がテーブルの脚に複雑に絡まってしまっていて、無理な体勢で出そうとすれば足を捻挫させてしまう可能性もあります。

汗びっしょりになって格闘する事20分!

やっとエルちゃんを助け出す事ができました。

私の体力ももう尽きてしまいそうでした。

お水を飲ませなくちゃ!でもお庭で段になっているところでないとエルちゃんは立ち上がれないのでお水を飲ませる事ができません。

とにかくお庭に運ばなくては...

エルちゃんを抱っこしようとしますが非力な私はエルちゃんを持ち上げる事ができません。

エルちゃんをテーブルのしたから救助することに全ての力を使ってしまった感じです。

でもそんなこと言ってられない事態です。

力を振り絞っエルちゃんのお腹を抱えて、申し訳ないけれど少しずつ引きずるようにしてお庭のお水を飲んだりご飯を食べたりするところまで運んでいきました。

人間と同じで体が動かなくなったワンちゃんを運んだり動かしたりするのはすごく重く感じます。

横になって動かないエルちゃんに器にお水を汲んできて頭を支えて飲ませるとなんとか飲んでくれました!

エルちゃん、お水を飲んでくれてありがとう!って思いました。

それまでですでに1時間半以上経っていました。

カイくんのお世話は全く出来ていません。

そこから野菜を切ったりしてご飯の用意をしてまずお部屋にいるカイくんに与え、次に庭にいるエルちゃんのところに持っていきました。

エルちゃん食べてくれるかな...

エルちゃんは食べてくれません。

カイくんのお散歩がまだ済んでいなかったのでとにかくお散歩に行くことにしました。

お散歩から戻るとエルちゃんは同じところに横になったままでした。

みるからに弱ってしまった感じがします。

朝のお世話が3時間を超えたところで心配しながお世話を終えました。

夕方行ってみるとエルちゃんはやはり横になっていました。

エルちゃんを日陰のゴザが敷いてあるところまで運びました。

とにかくお水を飲ませて夕ご飯を与えなくちゃ!と用意して持っていきましたが横になっているのでご飯がうまく口に入りません。

どうやって与えよう...

与えようとするとご飯が器からゴザにこぼれ落ちてしまいます。

そこでゴサを持ち上げてご飯をゴザからエルちゃんの口に入れるようにすると、なんとエルちゃんは口を開けてご飯を食べてくれるではありませんか!

器のご飯を全部ゴザに押しあけて、たくさん口に入るようにするとエルちゃんはほとんどのご飯を食べくれたのです!

もうダメかもしれないと思っていたので本当に嬉しくて、お家の方に写真を送って喜び合いました!

エルちゃんもご飯を食べくれたので

カイくんとお散歩にいきました。

帰って来るとエルちゃんは目を閉じてじっとしています。

今晩このまま息が絶えてしまったら...と思うといてもたってもいられません。

お家の方になんとか早く帰って来てもらうことはできませんか?とお願いするとそれでは明日の午前中に帰りますということになりました。

そして夜、近くに住むお姉さんにエルちゃんを見に来てもらえることになり少しだけホッとしました。

次の日の早朝ドキドキしながらお世話に行くとエルちゃんは横になっていましたがお庭にちゃんとウンチがあります!

移動してウンチをしたんだ!動けるんだ!と嬉しくなりました。

そして昨日のやり方でご飯を与えると結構たくさん食べてくれてビスケットのおやつまで食べてくれました。

ヤギのミルクも飲みました!

カイくんは大きな体の割にご飯を残す事があり、エルちゃんは元気なころはカイくんの残したご飯まで綺麗に食べちゃったりしていました。

食べる意欲がエルちゃんの命を支えているんだなぁ!と思いました。

カイくんと朝のお散歩を終えて、あとはお家の方が早く帰って来てくれるのを祈りながらお世話を終えました。

その日の夕方お家の方から帰宅した旨の連絡を頂きました。そしてエルちゃんの様子を動画で送ってくださいました。

驚いた事にエルちゃんがお庭をゆっくり歩いているではありませんか!

ちょっとヨロヨロしていますがちゃんと歩いています!

お家の方がお帰りになるまでエルちゃんはもつのだろうか?と心配でしたがこんなに元気になってしかも自分で歩いていることにビックリしました。

お家の方が居ないことでエルちゃんは寂しくて気力が失われてしまっていたのです。

パパとママがお帰りになって嬉しくてエネルギーが湧いて来たのですね。

パパとママに会えた喜びがエルちゃんを元気にしたのです。

元気になってくれて本当に良かったです。

何よりエルちゃんの生命力に感動しました。

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