第12話 精霊に懐かれてしまう悪役令息

-side ジークハルト-



「ふう、やっと大イベントが終わった」

「お疲れなのだ〜」



 パーティが終わった。

 ウィリアムの奴、なにかものすごいことを言っていた気もするが気のせいだろう。

 俺様の周りは今日も平和である。

 いや実家破滅寸前なんだし、平和とは程遠いか。早く平和が欲しい。

 ズンドラゴンもねぎらってくれている。



『お疲れなのです〜!』



 頭の上にポワポワとした光が浮いて、それもまた労ってくれる。

 なんかもう、疲れすぎて幻覚が見えているのかもしれない。

 白い髪に黒い目。とても綺麗な女の子だ。片手にハンマーを持ち、武闘派の印象を持っている。

 んーー……なんか妙にリアルだな?



「あ、精霊なのだ〜!」

「はっ--!?精霊?」



 思わず飛び跳ねてそちらを見る。

 確かに光は神々しく光っている。

 人間界での光ではない。



『初めましてなのです〜。我は精霊なのです』

「変わった自己紹介だな!?初めまして」



 精霊って自分のこと精霊とか言うんだ。全部思ったことが出る系主人公かな?

 敬語を話しているし、随分と律儀な性格の精霊なようだ。

 体育会系というかなんというか。



『今日はジークハルト様にお願いがあってきたのです』

「お願い?」

『私と契約して欲しいのです!』

「--えっ!?俺が精霊と契約!?」

『私は判断を司る精霊なのです。貴方のその堂々たる決断に毎度毎度驚いているのです』

「はあ?」

『なぜそんな、悲惨な状況なのにそんなに冷静な判断が出来るのです?』

「--!?」



 ちょちょちょ……、ちょっと待て。

 いきなり、ナイフ鋭くない?

 契約の研いできたのかもしれない。



「というか……、やっぱ、精霊から見ても悲惨な状況なのかよ俺」



 分かってはいたけれど、ちょっとショックだわ。



『当たり前なのです』

「一旦黙ろうか?」



 あとちょっとは躊躇えよ。

 契約しないぞ?

 いや、精霊とは契約したいけど?



『ワッハッハ!あなたのその決断力に惹かれたのです。契約してやってもいいのです!』

「なんで上からなんだよ」

「精霊なのだー。仕方ないのだー」

「そうだった」



 でも、上から目線で傲慢な精霊だったら、こっちから願い下げなのだが、どうなのだろうか?



「それは問題ないのだー、精霊は基本的に主人に従順なのだー、でかいのは態度だけで、清廉潔白だからそんな度胸ないのだー」

『わわわっ!エンシェントドラゴンさんに全てバレてるのです!?』



 そうなのか。だったら契約もありか。



「ちなみに契約することでなんか俺にメリットあるのか?」

『聞き方怖いのです……、メリットがなければウチと契約しないのです?』

「そ、そういうわけじゃないけど」

「ひどいのだー、主人そういうノンデリな事あるのだー」

「うぐっ……!」



 ビジネスライクと言ってくれ。

 多少ノンデリなのは認める。



「でも実際、契約前に事前に確認するのってマナーとしては当然なのでは?」

『精霊と契約する時に躊躇った人間など聞いたことがないのです。みんな即答でオッケーしていたのです』

「そうなのか……、というかもう一度聞くがお前と契約してどんなメリットがあるんだ?」

『一般的に精霊と契約してデフォルトでついてくるのは、状態異常無効の加護、魔力量増大なのです。ウチの場合はそれに加えて、嘘や悪意、本物か偽物かなどを見抜く真偽の眼が契約特典としてついてくるのです。とってもすごくお得なのです!』

「……すごい(語彙力)」



 いつ毒殺されてもおかしくない多方面を警戒しないといけないこの状況で非常にありがたい加護だ。

 それにさっきとは一転して、精霊さんはめっちゃ売り込んできてくれる。ありがたい。



「こっちからお願いしたいくらいだが良いか?」

『良いのです!名前をつけて欲しいのです!』

「じゃあ、ローラとかどうだ?」

『オッケーなのです!』

「よし!我が名はジークハルト。その力を我に貸し与えよ。契約の証に、我が魂と魔力を捧げる。汝の名は?」

『ローラ』



 --ピッカーー!



『成功なのです!』

「おう」

「おめでとうなのだー!」



 本当に精霊と契約してしまった。




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そして、カクヨム様にて週間総合ランキングに載った「魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓」「ヴァイオリン辺境伯の優雅で怠惰なスローライフ〜悪役令息として追放された魔境でヴァイオリン練習していたら、精霊界隈でバズってました〜」の3作品です!

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