魔法剣士の片手剣術無双 ~松葉杖をついた魔法剣士ですが、女ギルド長に超スキルを引き出してもらい最強になったので、ライバル剣士たちを片手で無双します
第19話 その頃、勇者ドルガーは④【勇者ドルガー視点】
第19話 その頃、勇者ドルガーは④【勇者ドルガー視点】
ここは勇者ドルガー・マックスの実家の大屋敷。
ドルガーは、バーデン・マックスという商人の息子である。
バーデン・マックスはランゼルフ・ギルドを創設し、本業は食料品を売る商人だ。
貴族ではないが、金は持っており、大屋敷を建てた。
一方、息子のドルガーは、父のバーデンの金で勇者の称号を買った、という噂が絶えない。
――そのマックス家の応接室では――。
「ぎゃははは! ダナンの野郎、馬車にぶつかって、三メートルも吹っ飛んだんだよな?」
ソファに座っているドルガーは、パシパシ手を叩いて笑った。
応接室には、「ウルスの盾」のメンバー……リーダーの勇者ドルガー、武闘家のバルドン、魔法使いのジョルジュが座っていた。
その周囲には、黒服の男たちが立っていた。
「あれから日が経ったが、バルドン、お前の報酬の三百万ルピーだ。確かめてくれ」
ドルガーは、バルドンに分厚い札束を手渡した。
「おお……すげぇ。これで飲み屋の借金と、住んでいるアパートの家賃が全部払えるぜ。……助かったよ、ドルガー」
バルドンは分厚い札束を、手に持ってながめた。
「しかし……。ドルガー、お前から『ダナンを馬車ではね飛ばせ』と聞いたときは、びっくりしたぜ」
実は、ダナンを馬車ではね飛ばした時の
ドルガーはバルドンに命令し、『ダナンを馬車ではね飛ばせば、三百万ルピーの
バルドンはその金に目がくらみ、ダナンを事故にあわせたのだ。
「お、俺だってバレねえかな?」
バルドンは心配そうな顔で言ったが、ドルガーは首を横に振った。
「絶対バレねえよ」
ドルガーはニヤついている。
「思い出せ、バルドン。準備にぬかりはなかったはずだ」
ドルガーは話を続ける。
「お前が
「そ、そうか」
「それに、あの時のあなたには、つけヒゲをつけてもらいました」
ジョルジュが横から言った。
「サングラスで顔を隠す、という手も考えましたが、これは見た目にも怪しすぎる。目立ってしまう。だから口ヒゲをつけるのが、単純で一番良い」
「そ、それで大丈夫なのか?」
「あの辺りは繁華街ですが、昼は人通りが少ないですからね。目撃者はほとんどいないはずです」
「ま、まあ、ドルガーとジョルジュがそう言うなら、大丈夫か。で、でも、ダナンを馬車でふっ飛ばすのは、やりすぎじゃなかったか?」
バルドンは札束を自分のカバンに入れながら、ドルガーたちに聞いた。
「計画を実行する前にも言ったろ。あの野郎……ダナンは生意気だ。痛い目に合わせてやりたかったのさ」
ドルガーはクスクス笑いながら言った。
「結局、あいつは死にゃしなかったが、入院した。それを口実に、ランゼルフ・ギルドから追放させることができた。あの野郎、弱虫のくせに
「まったくですな……ドルガーさんに逆らって……」
ジョルジュはうなずいた。
「ダナンは、今はマルスタ・ギルドに所属しているのです。しかし、そこも追い出させる手はずはできています」
「どういうことだ? 確か、マルスタ・ギルドのブーリンは、ダナンを気に入っているんじゃなかったか?」
バルドンはドルガーたちに聞いた。
ドルガーは笑って言った。
「マルスタ・ギルドに合成写真を送りつけた。プロの
「ど、どうやってそんな写真を作るんだ?」
「そいつは秘密だ。だが、ボードマートの合成写真はすげえぞ。本物にしか見えない。まあ、素人じゃ見抜けねえだろうな」
「で……ダナンはどうなるんだ?」
「さあ?」
ドルガーはひょいと肩をすくめた。
「マルスタ・ギルドを追い出されて、仕事がなくなる。金もかせげなくなって、
勇者ドルガーは、腹を抱えて笑った。
だが、ダナンをはね飛ばしたバルドンは、嫌な予感がして仕方なかった。
(俺たち……やり過ぎてねえか?)
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