第三皇子の第七夫人になったので、のんびりしようと思ったら、領地は魔物で破綻寸前です!? ~管理部スキルは異世界を救う……か?~
玄納守
第1話 私、嫁ぎます!
──夢の三食昼寝付き生活は唐突に始まる。
異世界に転生した方法は、正直、どうでもいい。
セクハラされた後輩女子を助けたら、その子が駅で私に「そういうことされると、明日から会社に行きづらくなるんです!」と言いながら、ドーンって押してきて、直後に電車がパーンと来て、私は死んだ。
最後に思ったのは「なんでやねん!」。推しのライブ前日だったのに。
18年経った今でも、あの後輩女子の言い分は理解に苦しむ。
しかし、それを感謝する日が来るとはねぇ。
コミュ障扱いされ、部署を次々異動させられた独身30代の強制終了。財務、経理、経営企画、監査、総務、広報……あとどこだっけ? 転々としたなぁ。
まさか次が異世界とは。
生まれ変わる時、神様っぽいのに「次の希望は?」と聞かれて「もう、何も不自由したくない」って願った気がする。
雑に転生した割には、まぁまぁの商家に女の子として生まれたわ。男になると思ってたのにね。
いまは帝都でも評判の器量よしで、時には『才女』と呼ばれてる。
このアニカ・シルバストリとして18年。でも私の日本人の時の本名、まだ覚えているけどね?
鏡を見るたびにぎょっとするほどの、
髪は本当は銀髪とかが良かったけど、明るい茶髪。地毛にしてはまあいいわ。
瞳の色はブラウンで、日本人の時と同じかな。
嬉しいのは生まれつきの二重。これは最高。切実に最高。
この世界、文化レベルは低いけど、日本ほどの男尊女卑でもない。女は女として自立しているし、普通に地位のある社会。
それでも争いごととなると「俺の後ろに下がっていろ」だから、女として生きるのは、割と楽。生命の危険という意味ではね? それに女性の騎士も多いし。
帝政だから、貴族とかもいるけど、今のところ帝都で悪い噂は、そんなにないかなぁ。民主主義はまだまだ先ね。大航海時代も来てない。
いずれ優秀な騎士さまか、豪商の家に嫁げれば幸運。
いや? 我ながら今回は見た目もいいから、もしかしたら、どこかの伯爵さまとかに見初められて、玉の輿?
なんて思ってたら、ある日、皇帝の使者が来て、
「アニカさまを、帝室に皇子妃殿下として、お迎えにあがりました」
──って、そんな話をされてごらんなさいよ?
もう、前の人生でもしたことがない、両手で口元を隠して「はっ」みたいな顔になるのよ。自分でも怖いわ。
何より嬉しいのは、これで、働かなくていいこと。これね!
異世界で特にスキルもなく生きていくって思ってたより大変。だから、この世界でも勉強しなきゃと頑張ってた。でもこの世界の勉強はかなり簡単で……。その簡単さが逆に不安でしかない。
もうそういう不安からもサヨナラ? ラッキーーー! 「人生、勝ち負けじゃない」って前は言ってたけど、これは、大勝利では!?
ヒーーーーーーハァーーーーーー!
って、大騒ぎしそうな私を抑えて、顔を両手で覆いながら、異世界の父母に
「お父様。私、全く皇族の作法も知らず、とても帝国のお役に立てるとは思いません。が……それでも……それでも、お父様たちのためになるなら」
って泣いてみたんだけど、
「使者さま。この通り、娘も嫌がっておりますし……大変ありがたいことですが……この話は」
って、とんちんかんなことを言い出したもんだから、慌てて
「嫁がせてくださーい!」
ってOK出しちゃった。
◇
その日の内に宮殿に行って、いろいろと儀式をして、いろんな書類に署名させられて、晴れて、このグランベレッツァ帝国の皇太子妃になったわけだけど……。
「第七?」
「さよう。アニカ妃殿下は、第七夫人となります」
妃殿下ってつけられるの、憧れてたわー。
って……ちょいまて。え?
これ、一人の妃を永遠に愛するお話じゃなくて、第七? 他に六人も奥さんがいるってこと?
……でも、まあ、いいのよ。ふふ。
私、皇太子妃。皇太子って、後に皇帝になられる方。第七夫人として、ひっそりと暮らせば、寵愛を受けても受けなくても贅沢三昧じゃない?
「では第三皇子のラヴァンダ領まで、お連れいたします」
ん? 第三皇子? 皇太子ではなく?
え? 継承権第三位ってこと?
……え、皇帝になるのに、邪魔者が二人も?
それより気になるのは、ラヴァンダって何? この国の西の果てじゃないの? 帝都からどんだけ遠くまでいくの? 地図の端っこにある場所じゃん!
「ラヴァンダまで、三週間ほどかかりますが、ご心配なく」
遠い遠い! やだやだ! 辺境すぎるでしょ! 三週間って!?
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