そよぎ先輩はサイコパスを全力で楽しんでいます!
オカノヒカル
8月7日~血だまりは夕空のように
血だまりの中で、あの子の命は失われていく。
私が彼女の喉元を切り裂いた瞬間、部屋の中からは、ほとんどの音が失われたように思えた。なぜなら、聞こえてくるのは、自分の大きく跳ね上がる鼓動の音だけだったから。
夕方でもないのに、部屋の中は真っ赤に染まっている。その鮮やかな色が夕焼けのようにも思えて、とても綺麗だと思ってしまった。
真っ赤に血塗られていたナイフも、どこか現実感がない。
室内の時計を見ると、午前10時30分を示していた。途端、コツコツと秒針の音が聞こえてくる。同時に、それまで聞こえなかった、あらゆる音が解放された。
セミの音、ボールを蹴る音、運動部の子たちのかけ声、ホイッスル……。
この部屋だけが、さながら平穏な学園の空気とは切り離されていたようにも感じる。
あの子に刃を向けた瞬間、私は世界から隔離されてしまったのかもしれない。
後悔はなかった。それどころか、甘く感じる背徳な行為に酔いしれる。そしてハイになった思考からは、かの有名なマザーグースの詩が導き出された。
「誰がコマドリ殺したの? それは私とスズメは言った。うふふ、洒落が利いてるね」
人を殺したのに、こんな気分になるなんて……。まるで、本当のサイコパスになったみたい。
それは、私が憧れていた姿そのものだった。
**
8月7日。
夏休みの最中、校内で女生徒が殺された。彼女の名前は
友人たちからは『コマ』と呼ばれていた。
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