第3話:裏切りの嵐・誇り高きクリフォード子爵家の反撃

 父も母も私も、必死で弁明しました。 

 ですが、三代もの長きにわたり借金地獄のクリフォード子爵家は、社交をほとんどやっていませんでした。


 しかも今日の婚約披露舞踏会は、表向きは全てフォーウッド男爵名義ですが、実際には多国籍貿易商のメギンチ家が準備したのです。


 クリフォード子爵家に味方してくれる貴族士族は一人もいません。

 婚約者になるはずだったルーカスは、私に冷たい視線を向けています。

 まるで路傍に落ちている石を見ているような眼です。


 ジョセフィンは勝ち誇った顔つきです。

 蔑むような眼をしています。

 私は、いえ、クリフォード子爵家は負けたのですね。


「……父上、私達は罠に嵌められたのですね」


「ああ、クリフォード子爵家を買い叩く気だ。

 これまで婚約にかかった費用に加え、違約金まで請求して、貴族院で裁判にかけて、クリフォード子爵家の家督をプランプター伯爵家の従属爵位にする心算だろう。

 爵位を失った上に、借金も残るだろう。

 私達は奴隷同然の条件で売られる事になる」


 悔しかったです、この場で号泣したかったです。

 弟のエリアスと妹のイシスは、余りの雰囲気に訳も分からず泣いています。


 ですが私は、貴族の誇りにかけて泣きません!

 父も母も必死で表情を保っています!


 視線の端に、驚愕の表情を浮かべたターニャが写りました。

 ターニャは今日の件を知らなかったのですね。


 ターニャは自分の父親とルーカスに騙されていたのですね。

 私は友人に騙されたわけではなかった、それが唯一の救いです。


「私は不貞などしていません!

 全ては爵位を狙ったメギンチ家とフォーウッド男爵とジョセフィンの策謀です。

 このような不正は神と王家が許さないはずです。

 正当な裁判を要求します、いえ、名誉を守るために貴族院に訴えます」


「あら、恥知らずな事。

 不貞を働いた加害者が、名誉を傷つけられた被害者を訴えるなんて、なんて厚顔無恥なんでしょう。

 わたくし信じられませんわ!

 でも、それもいいでしょう。

 ここにいる方々だけでなく、もっと多くの人にマチルダの不貞とクリフォード子爵家の不実を知って頂くのは、とてもいいことですもの。

 みなさまもそう思われるでしょう?

 ほぉ~ほっほっほっほぉ~」


 全て想定通りなのでしょう。

 貴族院の裁判で勝つための証拠も証言も、全て準備を整えているのでしょう。

 今更私や父がどれほどあがこうと、逆転の眼は無いのでしょう。


 でも、このまま踏み躙られるのは嫌です!

 勝てないまでも、戦って戦って戦い抜けば、体制が変わったのちの世で、勇敢で誇り高かったと評価されるかもしれません。


 私が視線を引き付けている間に、父が徐々にルークとフォーウッド男爵に近づいています、二人の顔を叩き決闘の申し込むのです!

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