第21話 レイの孤軍奮闘
ジャウラ町までたどり着いたレイたちはマトラ遺跡で何があったのか簡潔に説明しザランや研究員を町の中心まで送るとそのまま追ってきた『虹の瞳』と戦闘に入っていた。
「怪我人は退けッ」
「戦えない奴は逃げろ」
「町の中心部には入れるな――」
地元の魔導士たちは必死の抵抗を見せる。
「――」
レイのやることは変わらない、目に映る敵を出来るだけ多く切っていくのみだ――そして違和感に気が付いた。
「やっぱり......」
逃げてる時は急いでいてあまり気にはしていなかったが、レイが殺したはずの魔導士も何事もなかったかのように戦闘に参加してきている事に気が付いた。
「もしかしてスケルトンだけじゃなくてこの魔導士たちも死んでる?」
見た目は生きている人と変わりなかったから気づく事が出来なかった。
意識してみれば、彼らは魔法や簡易な単語こそ発するものの意思の疎通をする素振りをしてはいない、ただ黙々と己の役割を遂行する人形の様な存在にも見えて来る。
「どちらにしても、やる事は変わらないか......」
切る――切り臥せる。
ここの魔導士はあてにならず、ザランも戦闘の続行が困難な以上、自分がやらねばならない。
「切っても死なないみたいだけど、みじん切りにでもすれば死ぬのかな?」
いや既に死んでいるのならそれはおかしい?そんなことはどうでもいい。
「そうか......要は動けなくすればいいんだ」
見たところ傷跡は残っていた、つまり回復自体は早いわけじゃない――ならばこれが最適だ。
「どうせ悪人だし――問題ないか」
襲い掛かる魔導士の両手両足を目にも止まらぬ速さで切断する――
「ぎゃぁぁぁぁッ」
「ひぃぃぃぃ」
叫び散らす死者の群れ、その嘆きを聞いても止まらない、止まる必要はないのだ、レイにとっては彼らにかける温情はない。
「......」
芋虫のように蠢いている、予想通り、彼らは少なくともすぐには回復しない。短期的な問題はこれで大丈夫そうだ。
「次は――」
戦う、守る――殺す。
「怪我人は下がってください」
「しかし――」
「こっちは大丈夫だからッ」
ここの魔導士は戦闘慣れしていないようで怖気づく姿が目に度々つく。
「これじゃ、前線にいても危険なだけ......」
自分は違う、幼少の頃より戦いには慣れてきた自分に恐怖などない。
ある程度片付いてきて、目のつく所では敵がいなくなってきたころ――
「――ははは、良くやるねぇ」
近くに女の声が聞こえた、誰だ、敵だろうか、敵だ、こんな場でヘラヘラしているのだ敵に違いない、すぐにその声の先へと向かい――
「――」
その首に切りかかる――
「――ぇ、おっとッ!?」
その女は薄い灰色の髪をポニテ―ルにしていて動きやすい服をしていた。
そして女の首元まで近づいたレイの刀の刃を掴む。
「防がれたッ!?」
「――まったくお前は獣か?......うっかりヤッちゃう所だった......」
そういって刃を離す。
「誰」
「そう睨むな、お前は魔導協会の魔導士なんだろ?安心してほしい味方だよ」
「え、じゃあ仲間の魔導士?」
彼女はニヤリと笑う。
「訳あって近くに寄った所でこんな戦いが起きていた......だったら行くさ当然だろう?」
「そう......じゃあ助けてくれるんだ」
「あぁ、そしてこういうのは大本を叩けばいい、アタシがさっさと潰してやるさ、で敵は何処にいるかわかるか?」
「『虹の瞳』の首領アルセムと仲間がいま戦ってる、相手の目的はマトラ遺跡の棺、それを持ってここに来たからこうなってる」
レイは簡潔に説明した。
「簡潔な説明どうも――すぐ向かう」
「......名前を聞いても?」
彼女は振り返りながら答える――
「フローネス=ベルバスター」
ベルバスター、その家名はソフィアと同じだ、レイは恐る恐る聞く。
「ベルバスターッ、じゃあソフィアさんの――」
「あぁソフィアを知っていたか、そう、アタシはあいつ......ソフィアの姉だ」
フローネス=ベルバスター、言われてみればソフィアの面影を感じさせる顔立ちだった。
「それじゃ行くわ、お前なら大丈夫だろ?」
「はい、一人でも処理できますので」
フローネスはそのままアルセムがいるはずの方角へと歩を進めていった。
「――よし、続き」
大分数が減っていたのでどうにかなりつつあるも油断ならない状態でもある、レイはジャウラ町に近づいて来る敵の排除と住民の保護、棺の護衛を一人で兼任しながら防衛を再開した――
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