第17話 覚悟
「ひぃひぃ......」
ジャウラ町までどれくらいだろう、研究員も棺を持ちながらの逃走に堪えている。
「――邪魔だッ!」
研究員たちを中心に3人で手分けして守っている。
「チッ、しかし多い......」
スケルトン兵どもをなぎ倒していく、強くはないが数が多く守りながら戦わなければならない為にかなり神経を使う。
それに複数の敵を相手にするのは昔から苦手だ。
「皆様、最悪は貴方達だけで棺をぉ――」
「縁起でもないこと言うなよッリリケルッ!」
「は、はいぃ!申し訳ありませんッ!」
思わず怒鳴ってしまった、だけどそれはダメなんだよ誰かを見捨てるなんて。
「『アイスニードル』」
「『ファイアボール』」
「『アクアスライサー』」
遠距離からの魔法攻撃――『虹の瞳』の魔導士か。
「ここは避け――」
いや、ここで避けたら研究員に当たってしまう――まずい。
「ガルスッ――」
しかしレイが俺の前に出る――
「――『
魔法の攻撃を前にレイはそれを切り刻む、そしてそのまま前に進んで――
「『
一閃、そうみえたのは俺の目が追い付いていなかったからだ、一瞬で魔導士たちの身体を何回も切り開いていた。
「助かった」
「それよりも次くるよ」
レイは縦横無尽に動き回りながら敵の殲滅を図る。
「――死ねッ」
「ッッ」
油断した魔導士による剣による斬撃、防御出来たものの――
「痛いなックソ野郎がッッ!」
「ぐぁぁッ」
そのまま至近距離で『魔力玉』を叩きこむ――
「はぁはぁ......スケルトンはともかく魔導士は厄介だな」
雑魚のスケルトンとは違い魔導士はやはり油断ならない。
「他の奴の様子は――」
他の皆の様子を見ようとした時――
バリンッ――
何やら壊れる金属音が響き渡った。
「なんだ、ザランの方......」
見てみるとザランの持っていた剣が真っ二つに割れてしまっていた。
「――まずいな」
ザランの攻撃で雑魚を大量に片づけて来た、ここで使えなくなるのはキツイ。
「ザラン、一旦下がった方が――」
俺はザランを心配して言う。
「構うなッ俺は剣がなくとも戦えんだよッ」
しかし、俺の言う事に聞き耳を持たない、隙を見てレイにも目配せし説得を試みるが頑なに前線に立つと譲らなかった。
「おらぁぁぁッ!」
拳で殴りつけるザラン、確かに奴の言った通り戦えているとはいえ......
「こんなの......長くは持たないぞ......」
血がポタポタと零れながらも戦うザランは案の定、身体の切れが明らかに悪くなっていった。
「もうすぐジャウラ町ですぅ」
しかし幸い敵の数はかなり減っていた、これならどうにかなるかもしれない。
「良かったッとりあえず地元の魔導士たちに救援を――」
いくら強くなくともいれば心強い――
「――いいや、残念ながらそこにはたどり着けない」
――まさか
「何を驚いている?......そうか、私が来た事はそんなに驚くべき事だったか」
紺色のローブに紺色の髪をして眼鏡をかけているその男『
「そうだ......貴様たちの想像どおり――サルザー=ライゾールは負けた」
「――」
まずい――本当にまずい。
「『
「レイッ!」
レイは臆せずアルセムに切りかかっていく。
「――っと」
アルセムはレイの斬撃を寸での所でかわし続ける。
「こいつッ」
レイが翻弄されているし、レイも冷静さも欠いている気がする。
「――私に気を使っていて良いのかね」
辺りを見るといつの間にかスケルトン兵がわらわらと増えていた。
「――っレイ」
「わかってるッ!」
アルセムを攻撃すると見せかけてバックステップしそのまま周りのスケルトンを対処していくレイ。
「さてと、棺を貰おうか」
アルセムが近づいてくる。
「クソッ......」
――誰が残るか。
いまのザランは無理だ、まずアルセムには勝てない。
レイならば戦える、しかし敵はこいつだけじゃないスケルトン兵共や他の魔導士だっている。
それに彼女にはスピードがあり複数の敵にも対処できる、そういう魔導士の方が護衛に適任だ、ましてザランが戦えない状況ならば余計に――ならば誰が残るべきか。
もうわかってるだろう?
「......」
深呼吸。
「......それしかないよな」
複数を対処するのが苦手で特別早いわけでもない、負傷もそこまでしていない。
「俺が......時間を稼ぐ......」
「え」
心では覚悟を決めていても声に出すと自然には出ずに零れだすような発声をしてしまう。
「――良いの?」
「レイ、ここは俺が戦うべきだ......そう判断した」
レイは不服そうだったが俺の思いを汲んでくれた。
「......わかった......ダメそうだったら逃げてッ!」
「あぁ、行けッ」
レイはそう言って研究員とザランと一緒に逃げていく。
「――逃がすとでも?」
アルセムはレイの後を追おうとするが――
「――ッ」
アルセムの前を遮る。
「どけ小僧」
「いいや......行かすわけにはいかないな......それに、せっかくカッコつけたんだからさ――そんなダサい事は出来るかよ」
魔力を込めて戦闘態勢に入った――
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