第20話 引き篭もりとボッチ、コラボを依頼される
「———コラボの依頼が入りました」
「よし、拒否しよう」
「待って下さい! 相手は何と言っても結奈先輩なんですよ! こんな私にも優しくして下さった恩師なんですっ!」
姫乃がそんなことを言い出したのは、俺がTw◯tterのアカウントを作って1週間が経った時だった。
それも俺が今度こそ葵さんが作ってくれたクッキーとケーキを美味しく頬張っている時に、である。
「でも俺初対面じゃん。嫌だよ知らない人と一緒に何時間もいるなんて。結奈って人が日本一の配信者なのは聞いたことあるけどさ」
「というか私達に拒否権はありません。拒否すれば結奈さんのリスナーにボコボコにされます」
「…………関わらないのが1番な相手だなぁ……因みにその結奈って奴は止めたりしてんの?」
「してません。結奈先輩は少し高飛車な面があるので、気に入らないと自分は何もしませんが、本当に何もしません。勿論鎮静化も」
「ただの悪女じゃん! 姫乃には悪いけど絶対姫乃の性格に漬け込んでるじゃん!!」
「そ、そんなこと……」
姫乃は否定しようとしたが、どんどん尻すぼみに声が小さくなっていく。
どうやら自分の中でも心当たりが幾つかあった模様。
「ね? やめとこ? 俺、そんな女に会いたくないよ? 何ならもう一生分のお金はあるんだから配信辞めてダンジョンとこの世界の2つで暮らせば良くない?」
「……でも助けてもらったのは紛れもなく事実なので断れませんし、やめるにも私達のことを待ってくれているリスナーが2000万人も居るんです……」
「ぐ……」
そう———この1週間で俺達のチャンネルは2200万人を超え、いよいよ国内ベスト3にランクインしたのだ。
そのお陰でお互いの個人のTw◯tterアカウントのフォロワーも1000万人を超えているし、今も止まることなく上がり続けている。
今1番乗りに乗っているのは誰かと問われれば、間違いなく俺達だと誰もが答えるだろう。
「……何で急に話がきたの?」
「……これです」
姫乃が少し虚無った顔で俺の方にスマホの画面を向ける。
俺は反射的にその画面の表示を見て———絶句した。
なんとTw◯tterのDMでこんなことが書いてあったのだ。
『最近調子いいね? 今度一緒に配信しない? 場所は姫乃ちゃんがバズったあのダンジョンで。勿論拒否はしないよね? そんなことしないよね? だって私が姫乃ちゃんを助けたんだもんね? じゃあ返事待ってるよ!』
「怖い怖い怖い怖い怖い……ッ! どういうことだよ姫乃! コイツただのキ◯ガイじゃんか! というか何でこんな奴が日本一なのよ!?」
「……実力は私でも敵わないほどですので」
「…………What are you saying(君は何を言っているんだね?)」
「いきなり英語!? というか英語喋れたのですか!?」
「魔術言語より100倍簡単」
魔術を使うには今までの言語とは全く別の言葉を1から覚えなくてはいけなかったからな。
アレに比べれば翻訳魔術で翻訳できる程度だから余裕だ。
「……で、本当に受けるの?」
俺は真剣に問う。
この依頼は何か嫌な予感がするので、本音を言えば行きたくない。
行きたくないが……。
「…………はい。結奈先輩は私の恩師なので」
姫乃が情に厚いのはこの1ヶ月ちょっとでしっかりと認知していたので、今更驚きはしない。
はぁ……と俺はため息を吐いて頭を掻くと、姫乃の瞳を見つめる。
「姫乃」
「は、はいっ」
「———どうせ引き止めても行くんだろうから俺も仕方なく着いて行ってやるよ。姫乃に何かあったら俺が困るからな!」
「……ありがとうございます」
ということで俺は見るからに悪女っぽい結奈先輩とやらに会うこととなった。
「———よ、よろしくお願いします結奈先輩っ!」
「えぇ宜しくね姫乃ちゃん。そして貴方が…………」
「あ、はい、引き篭もりやってました魔術師のライヤーです」
「ふーん……」
誰か助けて下さい非常に気まずいです。
俺が心の中で泣いていると、結奈先輩とやらがニコッと笑った。
しかし、姫乃の様にほっこりはせず、同じくらいの美少女の筈なのにものすごく怖い。
「宜しくお願いしますねライヤーさん。噂では物凄い強いんだとか……頼りにしていますね?」
そう言って俺の腕を自身の胸に押し当てて妖艶な笑みを浮かべる結奈先輩。
結奈先輩は、明るい茶髪に薄い青の瞳を持った美少女で、年齢は恐らく姫乃の少し上くらいだろうか。
だが雰囲気はまんま彼方の世界で男を堕としては遊んでいた悪女みたいだった。
———簡単に言えばめちゃくちゃヤバい。
だってもう完全に俺堕としに来てるやん。
初手から距離感バグってんのよ。
「あ、はい、了解です。ただ……離してもらえませんか?」
「え?」
「いや『え?』じゃなくてですね……俺、昔こう言った雰囲気の方にしてやられたことありまして、少し警戒してしまうんすよ。後自分引き篭もりなんで陽キャは苦手なんです」
俺は自身の勘が触れられてから物凄く警鐘を鳴らしていたので即座に離れる。
本来なら此処まで棘のある言い方はしないのだが、こう言った相手には最初から貴女に興味はない、と示しておかないと何があるか分からないからだ。
「え、あ……そ、そうなんですね……」
「はいなのであまり過剰なスキンシップはやめて下さい。それじゃあ始めようか姫乃」
「は、はいっ! 結奈先輩も大丈夫ですか?」
姫乃が恐る恐る訊くと、結奈先輩は少しの間ダンマリした後、笑顔を浮かべて頷いた。
「私は全然大丈夫だよ。姫乃ちゃんが始めたい時に始めてね」
「はいっ! では———こんヒメですっ! ボッチ剣聖こと浅葱姫乃ですっ! 今回はライヤーさんとスペシャルゲストに来て頂きました!」
「どうも皆さんこんにちは♪ ダンジョン配信者をしている安堂結奈だよっ♪」
こうして最悪の空気のまま配信が始まった。
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