第9話 引き篭もりとボッチのダンジョン無双

 ———現在俺の目の前では、新しく買った『飛行型全自動配信用ドローン』の操作説明を読み込んでいる姫乃の姿がある。

 昨日『頑張って今日中に読み込みますっ!』と言っていた姫乃だったが、バズったことに気を取られて忘れていたらしい。


「あぅぅぅぅ……全然分かりません……」


 そう言って涙目で説明書と睨めっこしている姫乃を見ていると物凄く居た堪れなくなる。

 

 俺は一度ため息をついた後、非常に面倒だが姫乃の手から説明書を奪った。


「ちょっと失礼しますよー」

「あっ、ちょっ、待ってください!」

「でも分からないんだろ? 後10分で分かるのか?」

「うっ……そ、それは……。でもライヤーさんは先程まで探索者免許を取得していられましたし……」


 そう、俺は朝一で探索者の協会の様な場所に行って探索者免許を取得した。

 適当に経歴書いて、軽い模擬戦でよく分からん人と戦って、適当に相手していたらなんか合格してた。


 何か模擬戦の相手は『俺はA級探索者だから勝てると思わないことだ!』と言っていたが……普通に雑魚過ぎ。

 寝ながらでも勝てる自信があるね。


 ということで全く疲れていないのである。


「取り敢えず任せてみろって。これでも向こうの世界では天才って言われてたんだからな」

「ライヤーさんの任せろほど信用できない物は無いんですけど……」


 海の底に沈めるぞボケ……と言いたくなるが、グッと堪えて説明書に目を通した。


 ふーん……成程成程。

 配信の仕方……カメラの撮り方……チャットの映し方……ドローンの飛ばし方……全部書いてあるな。


「よし、大体分かった。姫乃、もう配信は始めていいのか?」

「え、あ、はい———ってもう分かったのですか!?」

「ああ。普通に書いてあったからな」


 俺がそういうと、『そ、そんな……確かに何度も確認したのに……』と呟いていたから、こういう所がおっちょこちょいなんだよな。


 まぁ取り敢えず始めるか。


 俺は配信ボタンをポチッと押す。

 すると———


《———配信を10秒後に開始します。10……9……8……》


 そんな抑揚のない無機質な声と共にドローンが浮き上がり、ドローンの前法部分に画面が映る。


《———3……2……1……スタート》


「皆さんおはヒメですっ! ボッチ……を脱却した『剣聖』姫乃ですっ! そして———」

「どうも、引き篭もり魔術師、怠惰の権現ことライヤーです。ヒメナーよ、今日も姫乃の不憫な姿が見たいかーー!?」



《おはヒメ!》

《おはヒメ!!》

《おはヒメ!!》

《おはヒメー!》

《おはヒメー!! 勿論見たい!》

《同じく!》

《切り抜き作る用意も万端だぞ!》

《是非ともお願いします》

《ライヤーさんきちゃー!》

《待ってた》

《ライヤーさん、今日もお願いしますよ!》



「任せろ皆。———って事で今日も俺はサボって雑談でもしよこ———」

「———絶対に許しませんっ! 少しは戦ってください!」

「……嫌だっ! 俺は200年前に働かないって誓ったの!」

「200年も働かなかったならいいじゃないですかっ! 今までと対して変わりませんよ!」


 そう言われてみると……確かに今までと大して変わらないな。


「でもどうせ人手があるならそっちに任せる方———いえ、何でもないです。それでは楽しい楽しいダンジョン配信行ってみよー!」



《あれはやられたな》

《姫たんの激おこぷんぷん丸に》

《一回見たことあるけどおっかないもんな》

《普段はめちゃくちゃ可愛いけどね》



 やかましいぞリスナーども。


 ということで気を取り直して俺達はダンジョンに入った。






 ダンジョンに入って数十分。


「———それではライヤーさんの力を見せてください!」

「……だからこれ?」

「はいっ!」


 キラキラした顔で言うんじゃないよ。


 現在俺は、姫乃の策略により、無数のオークキング共に囲まれていた。

 このオーク達は、姫乃がわざと奴らの周りをうろちょろして本能のままに集められてきた者たちだ。


「くそっ……何でよりにもよって1番ダルい奴を……」


 オークの強みと言えば、1に体力、2に体力、3に体力だ。

 兎に角体力が凄い。

 あの巨大ながら時速40メース(時速80キロメートル)ほどで数時間以上その速度を維持したまま走り続けられる。


 そのため、捕まえるのも殺すのも面倒なのだ。

 更に首も幹のように硬くて刃が通らない。


 そんな引き篭もり魔術師と対極にいるような奴らが数匹も居るのである。


「えぇ……もう帰りたい……」


 いやまぁ、流石にコイツら程度には負けないけどさ。


「姫乃」

「何ですか?」

「コイツら倒したら後は姫乃よろしくね」

「え?」 



「———《迅雷》」



 ———ピシャァァァアアアアアア!!


「「「「グルァァァァ……」」」」


 同時に発現された雷が、眩い光を一瞬だけ放ちながら寸分違わずオークキング達の頭上に落ち、その身をボロボロに消滅させた。


「…………ふぇ?」



《え?》

《何ですと?》

《何が起きた?》

《魔術? 音的に雷?》

《でも雷って屋内じゃ発現できないんじゃ……》

《でも完全に雷じゃね?》

《てかライヤーさんツエェェェェ!!》

《いや強すぎだろ!?》

《オークキングって一応姫たんでも少し時間かかるけど!?》

《何で片手間で殺してるの!?》



「どうだっ———っておーい、大丈夫ですか〜?」

「す、凄すぎ……こんなに強かったんですね……」


 俺がドヤ顔で振り向くと、そこには姫乃も目をまんまるにさせて驚きのあまり呆然としている姿と、驚きのあまり物凄い速度で流れるチャットが目に入ってきた。 


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 今日も多分18時に投稿する予定。

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