第7話 引き篭もり魔術師、雑談配信に出る

「———それでは久し振りの雑談やっていきますよーっ!」

「おー」


 俺達はつい先程、自分達がバズっていることに気付き、急いでゲリラ配信を始めた。

 因みにゲリラ配信とは、予定にない配信のことらしい。



《雑談きちゃー!》

《普通に姫たんの声可愛い》

《普通にライヤーさんいるの草》

《確かにww》

《流石引き篭もり。だらけ具合が違う!》

《そういえば何で姫たんの家にライヤーさんが居るの?》

《確かにww》

《何とも思わんかったわww》

《でもこれ炎上しない?》

《まぁ姫たんガチ恋勢も結構いるしな》



「あ、それはですね、皆さん知っての通りライヤーさんは異世界人なので、探索者でもなければ家もなく、お金もないじゃないですか」

「ぐはっ……鋭い言葉の刃が……」   

「あっ、ご、ごめんなさいっ!」


 俺は思わぬ場所からの結構厳し目な言葉の刃がこれでもかと全身に突き刺さる。

 それを見た姫乃はすぐに謝ってくるが、


《やめてあげて! ライヤーさんのライフはもうゼロよ!》

《一撃で崩れ落ちたww》

《引き篭もりはメンタル弱いんよ》

《此処にも引き篭もり居て草》

《正直ライヤーさんは可哀想だけどww》

《それなww》



 リスナーの間で完全にオモチャにされてしまっていた。

 しかしそれは俺だけではなく……



《相変わらずの無自覚毒舌》

《これが友達出来ない理由なんだろうなぁ……》

《顔も性格も強さもあって声もいいのに》

《連れて来たの姫たんなのに辛辣すぎて草》

《これはまた友達いない歴が長引くな》



「ふっふっふっ……よく聞いて下さいヒメラーの皆さん! なんと———私はもうぼっちではないのですっ!」



 そう言って胸を張る姫乃だったが、友達って言っても俺だけで1人だけど……。

 しかし姫乃の暴露はヒメナーにとっては相当な事だったらしく……。



《なっ……そんな馬鹿な……!?》

《姫たんには今後10年くらいは出来ないと思っていたのに……》

《姫たんの初めての友達はきっとライヤーさんだな》

《確かにww》

《じゃないと一緒に雑談配信に出ないしな》

《と言うか結局何で姫たんの家にいるの?》

《はっ!?》

《そういえばそんな話から始まったな……》



「ズバリ———ライヤーさんは一般人なので家のダンジョンには帰れず、お金も何もかもが無いので、私が責任を持って泊めることにしました」


 ……間違ってはいないが、物凄くこれだけ見たら社会不適合者だよな?  

 まぁ全部間違ってないんだけどさ。



《めちゃくちゃ言われてて草》

《まぁでも200年も引き篭もりやってたなら言われるか》

《確かにw》

《しゃーないか》

《探索者になれば脱却できるよ!》

《国籍ないから取れない件w》

《終わってんじゃんw》



「お、おい、ヒメナー達よ……一応言っておくが、明日探索者になるからな?」

「そうですよ! 私が推薦しますので! それにまとまったお金が出るまでは私が家事も何もかもしますので!」

「ありがとうママ!!」



《初めての友達ために張り切ってんな姫たん》

《過保護になりそう》

《俺も姫たんにお世話されたい》

《姫ママ可愛い》

《流石姫ママ》

《俺にもこんな可愛いママ欲しかった》

《それな》

《姫たんがママなら日本最高難度の大学も余裕でいけそうw》

《俺ならお金稼いで専業主婦にする》


 

「ママはやめて下さい! 私まだ、か、かれ、彼氏も出来たことないんでしゅから!! うぅぅぅ……噛んだ……いひゃい」

「何それ可愛い」


 舌を噛んで少し涙目になりながら痛がり、舌足らずな感じで話す姫乃は、思わず口に出てしまうほどに可愛かった。



《え、可愛い過ぎ》

《かわいい!!》

《いひゃい助かる》

《やっぱり姫たんは不憫が似合うw》

《それなw》

《マジでそれw》

《激しく同意するわw》

《こんなドジっ子がめちゃくちゃ強いとか萌え要素しかないやん》



「っ〜〜〜〜〜!!」


 どうやら先程のはリスナーにも好評な様子で、そんなチャットを見て茹でだこの様に真っ赤になる姫乃。

 その姿で更にチャットは沸き立つが、流石にこれ以上は姫乃が話せなくなりそうなので話題を変えることにした。


「そういえば姫乃ってどうやって俺のダンジョンまで来たんだ?」


 俺、追っ手とか侵入者が来ない様にモンスターの他にも沢山の罠やら魔術陣を展開していた筈なんだが。

 それも誰もほとんど即死級のやつ。


 正直自分でも通りたくないんだが……と言うか命懸けないと普通に通れん。

 やだよ、自分の罠で命落とすとか。


 しかし、姫乃は俺の質問にまだ少し赤みがかった顔をパタパタと手で仰ぎながらなんでもないかの様に衝撃の一言を発した。


「そうですね……確かに危なそうな罠は沢山ありましたが全部回避しました! 偶にマシンガンの弾とか光魔術を回避したりするので案外簡単でしたよ?」

「……おい、ヒメナー達よ。かの女神が言っていることは誠か?」



《もちのろんや》

《楽々回避してたな》

《何なら発動する前に勘で言い当ててたw》

《姫たんの勘はほぼ未来予知だからな》

《見た感じはヤバそうだったけど》

《姫たんよそ見しながら避けてたぞ》



「あ、あれ? 俺の罠ってよそ見しながら避けられるもんだったっけ……? 普通にガチで研究して作ったんだが……」

「え!? あれってライヤーさんが作ったのですか!? 通りで悪質で小狡い罠だなと思ったんですよ」

「…………(クリティカルダメージ)」

「あ、あれ? ら、ライヤーさん!?」



《あ》

《あ》

《あっ……》

《あw》

《あ、死んだ》

《死んだな》

《口から魂抜けてるぞw》

《これぞ本当の、ただの屍の様だw》

《可哀想すぎるww》

《やっぱり姫たんは無自覚毒舌》

《2人ともめちゃくちゃいいコンビじゃんw》

《主にダメージはライヤーさんだけどなw》

《確かにww》



「ら、ライヤーさんっ!! あわわわわわ……ど、どうしましょうヒメナーの皆さん! わ、私の初めての友達が口から魂出して白目になってますっ! ど、どう、どうすれば……」


 言葉の鋭い刃に殺された俺に、涙を瞳いっぱいに溜めて、ふるふると震えながらテンパる姫乃。

 それを見て《笑笑》《草》《ww》を永遠に生やして笑うリスナー。


 ……ふっ……この世界も甘くないぜ……ダンジョンは甘かったけど」


 雑談配信というものは、メンタルがやられるものだと理解する俺だった。


————————————————————————

 次は18時予定。

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