第16話 実戦連携
戦いの最前線にグレイがいることが信じられないジーク。それもそのはず、グレイとの出会いは盗賊団からの救出だ。
魔獣ひしめく最前線に来られるならば盗賊団ごときに捕まりはしないだろう。
首をスパッと切られた様子からグレイから距離を取る魔獣。それを見計らってグレイはジークにお願いをする。
『ジーク 頼みがある』
「ぉお……なんだ?」
『助けて』
「え?」
口を開いて間抜けそうな面で硬直した。
助けに来てくれたであろう味方が助けを求めると言う展開にジークは戸惑う。
「え、助けに来てくれたんじゃ……」
『魔力 足りない さっきの 無理 敵 倒して』
「え〜〜〜!?」
文章にする魔力すら無いのか文章は途切れ途切れで単語で会話するグレイ。
当然と言えば当然だ。タリアの解毒から始まり今に至るまでずっとルーンを起動している。
最後に弾幕と圧縮ルーンが決め手となった。もう、通常のような物量による圧勝は厳しい。
圧縮ルーンなどもってのほか。
『手伝うから』
「…あぁなるほど!もっと簡単に言ってくれよな!グレイ、ホントはお前とも冒険したかったんだ。実戦で悪りぃけど連携訓練だ!」
先程まで苦しそうな顔だったジークに笑顔が戻る。子供のようないつもの顔だ。
そんな顔を見たグレイも自然と頬が緩む。
(ロベドは……もう限界だ。二人でやるしか無い)
ジークが飛び出す。すかさずグレイはロベドの前に陣取っていつでも援護ができるように準備する。
「デカいのはいい!足の速い奴だけ動きを止めろ!」
グレイは返事はしない。代わりにルーンで答える。
足の速い狼型魔獣がジークを襲う。だが、剣の間合いギリギリで水の縄で足を取られる。
「良し、その調子で頼む!」
ロベドと背中合わせで互いを守りながら戦っていた時よりも格段にジークの動きが良くなっている。特段、グレイが何かしたわけでは無い。
ジークの剣技は守るより攻めにこそ真価を発揮するタイプだからだ。リーダーの資質と言えば聞こえはいいが単純に突撃バカなのである。
「ハァアアッ!!」
体格の大きい熊型魔獣を一刀両断。まさに鬼神の如き活躍を見せるジークによって次第に魔獣が減っていく。
もう少し、あと数体で終わる。
奴はそんな気の緩みを待っていた。
「良し…あと五体!」
『ジーク逃げてッ』
いち早く気がついたグレイが伝えようとするがジークがそれに気がつくには遅すぎた。
「ぐぁっ!?」
大木に激突されたような衝撃がジークを襲う。吹き飛ばされゴロゴロと地面を転がる。
『ジーク!』
駆け寄るグレイがそばに来た瞬間、ジークがガバッと起き上がる。
「あっっぶねぇええええ!この本?がなかったら死んでた!!」
ジークは本をグレイに手渡す。それはグレイの人生の一冊、【ルーンの書】だ。
ルーンの書の特性は燃えず濡れず曲らず切れず。そこらへんの盾より性能は遥かにいい。そして、所有者の元にどんな障害があろうとも現れる。
盗賊団から助けられたグレイはルーンの書をジーク達の家に置いて来ていた。だから、ジークがピンチになった瞬間、ジークの前にルーンの書を呼び出した。一回限りの緊急防御だ。
そして、攻撃した張本人。
タリアやレイラに毒をもった犯人、蛇型魔獣がこちらを睨みつけていた。既にジークへの攻撃に巻き込まれて他の魔獣は死んでいる。
ジークの元に駆けつけルーンを起動する。
「お?身体が軽くなった!」
『痛み止めしただけ。後でその分のダメージはあるから』
「十分!」
ジークは起き上がって魔獣を見る。
大木のような体躯。毒を放出する能力。狡猾に敵を攻める知恵。剣を弾く鱗。
他の魔獣とは一線を画す。
「なぁグレイ。俺がアイツ倒せると思うか?」
『無理』
「だよなぁ」
こちらは満身創痍の男二人と魔力切れ寸前の華奢な少女。
対してほぼ無傷の魔獣。勝率は1割を下回るだろう。
「で、なにか作戦あるか?」
『魔力もう無い。一撃で倒す。剣見せて』
グレイはジークの剣にルーンを刻む。
鋭利、強靭そしてグレイの始まりのルーン火のルーンを受けた剣は赤熱化しながら光る。
剣が溶けずに熱に耐えられているのは魔法に耐性がある素材で作られているからだがそれでも少しずつ崩壊を始める。
「カッケェええええええ!よぉし、これならイケるッ」
まるでおもちゃをもらった子供のように喜ぶジーク。
だが、グレイは魔力切れでうずくまる。
『もう、何も出来ない。頑張って』
「おう!任せとけ」
少女の加護を受けた剣を携え
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